久留米大学医学部 産科婦人科学教室 牛嶋 公生 主任教授

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育児中でも二次施設で描くのは「明るい未来」

【うしじま・きみお】 1983 久留米大学医学部卒業 同産科婦人科学教室入局 1990 米テキサス大学ダラス校留学 2000 久留米大学医学部産科婦人科学教室講師2004 同助教授 2014 同主任教授

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―産婦人科医不足だと言われています。実際は。

 日本産科婦人科学会(日産婦)は、毎年の目標新規入会者数を500人としています。しかし、実際は400人前後で推移。十分な数を確保できているとは言えない状況です。

 産婦人科には周産期、生殖内分泌、婦人科腫瘍、女性ヘルスケアの分野があり、フィールドが広く、全体数が足りていない。中でも、喫緊(きっきん)の課題は分娩を担当する医師の不足です。

 2000年代初頭、最終的には無罪になったものの産婦人科医が刑事訴追されたのをきっかけに、「訴訟リスク」を避けたいという考え方が一気に広がりました。それまで産婦人科常勤医1〜2人体制で分娩を扱ってきた医療機関が、次々と分娩取り扱いを廃止。24時間365日複数医師がいる体制を維持するためには最低4人の医師が必要ですが、充足させることができなかったからです。

 分娩できる施設が減ると、残る施設に妊産婦が集中する。すると分娩を続けている施設でも、今いる医師の数では対応しきれなくなる。しかも、大学側も医局員の数が伸びず、増加した分娩数に十分対応できる適切な人数を配置することが難しい状況が続いています。

 マンパワーの不足は、今、必死で産科医療を支えている医師の疲弊を生みます。さらに、産婦人科医は大変だというイメージが先行することでなり手も減り、人員不足を加速させています。

 日産婦が設定している産婦人科常勤医の数値目標は、総合周産期母子医療センターで20人以上、地域周産期母子医療センターでは10人以上。現実には総合周産期センターであるわれわれのところでも10人程度で奮闘しています。

―顕著な女性医師の増加も影響していると言われています。

 産婦人科医はかつて、ほとんどが男性でした。しかし、今は20〜30代の6割超が女性。全診療科の医師の中での伸びを大きく上回るスピードで増加しています。

 30代、40代の女性医師が結婚や出産を経て、仕事を辞めたり、フルタイムでの仕事が難しくなったりすることがある。男性医師やほかの女性医師がカバーしていますが、負担が過大になると、まだまだ分娩に対応できる年齢の勤務医が夜間当直のない検診部門に移ってしまったり、退職してしまったりといったことを招く恐れもあります。

 私が育児中の女性医局員たちに言うのは、「フルタイム勤務でなくても構わない。大学病院勤務が難しいとしても、二次施設にいてください」ということです。

 二次施設には、常に新しい情報が入ってきます。あらゆる分野の専門家がいて、指導したり一緒に患者さんを診たりする。彼女たちの産婦人科医としてのキャリアを考えた時、二次施設にいる意義は大きいのです。

 さらに育児中の女性医師が、短時間であっても二次施設で働くことによって、その施設で働く他の医師の負担を緩和することもできるはずです。

―女性産婦人科医が二次・三次施設で働き続けるための取り組みは。

 一つ目は、当医局の関連病院である二次施設での週1回程度の外来勤務です。北部九州一円に関連施設があり、多くが地域の基幹病院です。

 産休・育休で何年も臨床から離れている人の中には、「アップデートに接していないので大学に戻れない」と、自らハードルを上げてしまう人もいます。

 その結果、医師としての仕事は継続するものの、「産婦人科医」という専門性を手放してしまう人も出る。それを避けるために、勤務の頻度は低くても、情報をキャッチできる場で働いてもらう必要があるのです。一方の関連病院側も人手を補うことができる。お互いに利点がある方法です。

 二つ目は、当大学病院のパート勤務医師制度の活用です。この制度は「元気プロジェクト男女共同参画事業推進委員会」が主導し、2015年4月にスタート。産婦人科では現在1人が利用し、週2〜3回、外来診療を担当しています。

 私たちの医局ではまだ実現に至っていませんが、将来的にはパート勤務から常勤への移行が進んでいけばという期待もあります。

 私たちの医局は64人中女性が21人。そのうち17人は子育て中です。当直を免除したり、週の勤務日を少なくしたりすることで仕事を継続している育児中の常勤女性医師もいます。

―独自の教育システムについて教えてください。

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 女性産婦人科医のキャリア継続だけに目を向けるのではなく、男女問わず産婦人科医を増やすことや働く環境の改善、キャリアアップも、同時に考えていく必要があると思っています。

 教授就任後、学位とサブスペシャルティを取得するための専門医コースを作りました。

 例えば「婦人科腫瘍専門医コース」では研究に打ち込み、さらに病理や消化器外科、放射線科などの他科で3〜4カ月間ずつ研修。症例を通じてつながりがある診療科に短期間でもメンバーとして加わることで、より深く考え方などを理解できると考えています。

 今、実際にこのコースで学んでいるのは婦人科腫瘍専門医コースの1人だけで、最終学年に至るのは2年後。まだまだ未知数ですが、将来は周産期など別の分野の専門医コースにも人が入り、各分野のリーダーとして育っていってくれたらと願っています。

 産婦人科医の未来は、決して憂うべきものではありません。

 訴訟件数は一時期より減り、「いつお産があるかわからないから、遠方へ出かけられない」などといった状況も改善傾向。出生数は減っていますが、女性の妊娠・出産年齢が上がったことでハイリスク妊婦が増加。若年者の婦人科悪性腫瘍の患者の増加に伴い、未産婦の患者の機能温存の希望も増えるなど、高度医療の需要は高まっています。

 働きやすさが徐々に向上し、求められるものや、やりがいも大きい。この産婦人科医を多くの人が目指し、さらに続けてほしいと思います。

久留米大学医学部 産科婦人科学教室
福岡県久留米市旭町67
TEL:0942-35-3311(代表)
http://www.kurume-gyne.com/


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