陽子線治療施設の船出順調 海外からの患者も獲得へ
1982年昭和大学医学部卒業、名古屋市立大学医学部第2内科入局。名古屋第二赤十字病院、医療法人明陽会成田記念病院院長などを経て、2010年から現職。
2018年4月にオープンした社会医療法人明陽会の「成田記念陽子線センター」。東海地方の民間施設による陽子線治療装置の導入は初だ。成田真理事長は「良いスタートダッシュが切れた」と手応えを語る。今後は、海外からの患者の獲得にも乗り出すという。
―現状について。
当法人陽子線センターの1年目の治療実績は、年間で200人超の見込み。順調な滑り出しです。
現在、2018年4月に保険適用となった「前立腺がんに対する陽子線治療」が中心です。今後は肝臓や肺など、治療対象の領域を拡大し、まずは年間300人以上を目指したいと思っています。
採用したのは、ベルギーの企業であるIBA社の陽子線治療システム。「ペンシルビーム」と呼ばれる細いビームを腫瘍の形状に合わせて照射する「スキャニング方式」の専用機で、導入は国内第1号です。
複雑な形状のがんなどに強みを発揮します。周囲の正常な組織に与える影響を抑えることが可能で、副作用の低減につながることが期待できます。
1人当たりの照射時間が短い点も特徴です。前立腺がんの場合は1分以内。現在、当センターでは1時間に2人のペースで実施しており、徐々に人数を増やしていく計画です。
―陽子線治療は順調に普及していくのでしょうか。
症例数の増加につれて陽子線治療の有効性がさらに明らかになっていくと思います。前立腺がんに対する陽子線治療の成績は手術と同等であるとされています。また、例えば肝臓がんに関しては手術が困難なサイズのがんであっても、陽子線治療によって消失させることが可能なケースもあります。超高齢社会においては、「患者さんにさまざまな選択肢を提示できる」ことが重要だと思います。
ただ、このような高度な医療を提供し続けていくという観点では、やや厳しい現実もあるのです。日本の陽子線治療の費用は160万円。海外に目を向けると1000万円に設定されている国もあります。
現状の制度設計では、導入に踏み切れない、あるいは導入したものの経営への影響が懸念される。そう感じている医療機関もあるでしょう。
当法人としても患者数の増加を図るための策の一つとして、中国とのネットワークの構築を進めています。
中国東部の江蘇省・南通市に、30年ほど前から研修医の派遣などで連携している病院があります。
現地の患者さんの治療を当院で行う流れをつくろうと、事務所を開設する準備や講演会の開催など、受け入れのための活動を積極的に展開しています。当法人の成田記念病院の中華料理レストランには、医療通訳の資格を持つ中国人スタッフもいます。こうした人材も活用していきたいですね。
国内では、関東圏の患者さんのニーズをしっかりと捉えていきたいと考えています。東海道新幹線が乗り入れる豊橋駅から当院までは徒歩3分ほど。アクセス面を考えても、東京や神奈川からの通院も十分に可能でしょう。
スタッフについては長年、名古屋市立大学の放射線医学教室のバックアップを得ています。教授は陽子線治療分野の第一線で活躍されている芝本雄太先生。センター開設の際にもご協力いただきました。
みな「最新医療に携わりたい」というモチベーションが高いのです。当センターが「育成の場」としても発展していけたらと思っています。
―今後について。
手術、化学療法、放射線治療。「がんの3大療法」のレベルを、全体的に引き上げていくことが目標です。患者さんの多様な要望や悩みにできるだけ応え、いずれの選択肢でも質の高い医療を提供できる。そんな体制を整えていきます。
社会医療法人明陽会 成田記念病院
愛知県豊橋市羽根井本町134
TEL:0532-31-2167(代表)
http://www.meiyokai.or.jp/narita/