沖縄県立中部病院 本竹 秀光 院長

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実力を高める教育環境はいかにして実現したか

【もとたけ・ひでみつ】
1981年大阪大学医学部卒業。沖縄県立中部病院、米ミシガン大学小児心臓外科留学、沖縄県立八重山病院副院長などを経て、2016年から現職。

 新専門医制度、働き方改革、医師の偏在ー。複数の論点が交錯しながら「これからの医師像」の模索が続いている。ハワイ大学のバックアップで始まった沖縄県立中部病院の卒後臨床研修は多くのジェネラリストを輩出し、戦後以降の県の医療を支えてきた。その歴史をひもとくことで「教育のヒント」が見えてくる。

本竹院長2.jpg

―研修制度が始まった背景を教えてください。

 1944年10月10日、米軍による空襲によって那覇市のおよそ90%が焼失。翌1945年に沖縄戦が始まり、日米軍、民間人を合わせて20万人の死者が発生したと言われています。

 終戦時、沖縄県内に医師は60人ほどしかいなかったと聞いています。医師をどう確保するか。戦後の沖縄の医療は、そこから始まりました。

 本土の医学部を卒業した者が沖縄に戻って医療を充実させる。米国民政府(米国政府の出先機関)は奨学金制度なども整備しましたが、成果は芳しくありませんでした。帰ってきても研修可能な病院は限られ、指導できる医師も少ない。教育を受けられる環境が著しく不足していたのですね。

 そこで1967年、「沖縄の医師を増やす」ことを目的に、ハワイ大学から派遣された教授ら指導医の一団による臨床研修が当院で始まりました。

 8人の1期生たちが当院、さらにECFМG(米国医師国家試験受験資格審査NGO団体)の認定を取得して米国に渡り、トレーニングに臨んだのです。

―どのような医師の育成を目指したのでしょうか。

 ハワイ大学のチームは1971年に帰国。米国への留学経験があり、日本人スタッフとして指導医チームに参加していた真栄城優夫先生(のちに沖縄県立中部病院院長)が中心となって事業が継続されました。

 外科、内科、小児科、産婦人科を回る米国式の研修プログラムは、徹底して「ジェネラリスト」を育てることを重視したもの。当時の日本の教育とはまったく異なるものでした。

 多様なコモンディジーズの診断と治療、子どもから成人までの気管内挿管、お産。豊富なプライマリ・ケアの経験を積んだ1期生の中には、留学中に外科や麻酔科といった米国の専門医を取得して帰国した者もいました。

 高度な研修を受けた1期生が2期生を、2期生が3期生を指導する。いわゆる屋根瓦方式と呼ばれる仕組みが当初から確立されており、その上で発展してきたことが特徴です。

 また、琉球大学医学部の設置(1979年)に伴って、連携する臨床教育病院として同大の医学生の臨床教育も受け入れるようになりました。

 ECFМGは2010年に、米国の医師国家試験を受験するための要件として「国際機関の認証を得た医学部の卒業生」と通達。臨床実習は「72週以上」が必要とされています。

琉球大学が単独で達成するのは困難な週数です。教育施設として当院に求められるものは、これからますます重要となるのではないかと思います。

―今後の方針は。

沖縄県立中部病院外観.jpg

 いまや沖縄の人口10万人当たりの医師数は、全国平均を上回るまでになりました。しかし、日本の各地と同じように、沖縄県内でも医師の偏在という問題は解決できていません。

 特に、北部地域の医師不足の深刻さが指摘されています。当院でも、1年間の離島勤務を組み込んだ後期研修プログラムを用意するなど、へき地や離島の医療を支えることのできる医師の育成、派遣に力を入れています。

 最近、当院の外科の若手スタッフが「十種競技の選手を目指したい」と言っていたのが印象的でした。

 沖縄県立中部病院が育ててきたのは、まさに十種競技のスペシャリスト。時代とともに新しい風を入れながら、愚直に役割を守り続けたいと思います。 

沖縄県立中部病院
沖縄県うるま市宮里281
TEL:098-973-4111(代表)
https://chubuweb.hosp.pref.okinawa.jp/


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