肺がん、神経に特化したブランド力で連携を図る
1984年名古屋大学医学部卒業。沖縄赤十字病院、琉球大学医学部附属病院などを経て、1994年沖縄病院入職、2014年から現職。
2018年には沖縄で唯一の「肺がんセンター」、その2年前には「脳・神経・筋疾患研究センター」と、続々と開設している国立病院機構沖縄病院。沖縄の医療において、どのような役割を果たしているのか。
―病院の特徴を。
71年前に、沖縄民政府の公的な結核療養所として金武町でスタートしました。40年ほど前に宜野湾市に移転。その少し前に国の政策医療として筋ジストロフィーなどに対応する神経難病病棟を併設しています。
現在も、結核の最終拠点病院として、また沖縄県から唯一指定されている難病医療拠点病院として今に至っています。
ただ、結核は年々減っており、同じ呼吸器疾患である肺がんの患者さんが増加。沖縄では肺がんが多いという実態があり、これは1972年に本土復帰以前、タールの含有量がかなり高い沖縄ブランドのたばこがあったことが要因ではないかと言われています。
肺がんの患者さんを調べてみると、喫煙開始年齢が早いこともわかっています。そこで、沖縄県内の患者に高度な治療を受けてほしいと昨年「肺がんセンター」を立ち上げました。12年前には緩和ケア病棟を併設しており、今は「結核」「神経難病」「肺がん」「緩和医療」という四つを柱に掲げています。
肺がんセンターでは、内科医6人、外科医が4人、そして病理診断と放射線科の医師とがチーム医療の体制をとり、十分検討した上で、その患者さんにあった治療法を提示します。
肺がんに関しては、新患で年間200人が来院されています。手術では、血管形成、気管支形成といった機能温存を積極的に行い、内科においても患者さんに効果的な薬剤を前もって調べることによって、奏効率をあげています。
分子標的薬と免疫チェックポイント阻害剤が登場してから、予後が大きく改善した実感があります。死亡率が高いとされる肺がんですが、ここ2~3年の治療成績をみると革命が起こっているという印象を持っています。「肺がんだから...」と諦める必要がないことを、もっと広く県民の方に発信していきたいと考えています。
2016年に完成した「脳・神経・筋疾患研究センター」は専門医が7人おり、筋ジストロフィー病棟が100床、神経内科病棟が45床。県内全域から紹介を受け、診断・治療困難な神経疾患の診断・治療を行っています。
研究も盛んで、国内外での発表も積極的に行っています。研究成果としては沖縄型神経原性筋萎縮症があります。家系的に発症していることから常染色優体性遺伝の疾患であることが判明し、治療にも光が見えてきました。
当院は、呼吸器外科専門医修練基幹施設として、日本呼吸器外科学会から指定を受けるなど、教育も大切にします。若い呼吸器外科医、呼吸器内科医、神経内科医を育てていきたいと考えています。
―今後の展望は。
肺がんや神経疾患に特化するなど「ブランド力」を上げていくことで、結果、沖縄県民に対して高いレベルの医療を提供できるのではと考えています。
当院は、琉球大学医学部附属病院から近く、そのほかにも急性期病院が多い場所に立地しています。にもかかわらず、これら急性期の病院はどこも満床状態です。当院は、肺がんに関して専門医が多く在籍し、症例数も多いという強みを生かして、若手医師の育成と学生の教育においても周辺医療機関と役割分担と連携を図り地域包括ケアについても今後見据えていきたいと考えています。
私たちの基本理念は「患者様の立場を尊重し、高度で良質の医療を提供する」です。看護など各職場が年度ごとに明確な目標を掲げ、それに向かって努力しています。安心と信頼を提供するような病院づくりを今後も目指していきたいですね。
独立行政法人国立病院機構沖縄病院
沖縄県宜野湾市我如古3-20-14
TEL:098-898-2121((代表)
http://www.okinawa-hosp.jp/