純真学園大学学術講演会 石野良純・九大教授
特定の遺伝子を狙って加工する「ゲノム編集」。特に、「CRISPR―Cas9」システムを使った改変技術は、世界中で使われている。
このもととなる、繰り返しDNA配列を発見した、石野良純・九州大学大学院農学研究院教授が、2月2日、純真学園大学学術講演会に招かれ、「ゲノム編集技術に応用されたCRISPR〜その発見から今日まで〜」と題し、遺伝子工学の発展や、ゲノム編集技術の可能性などについて語った。
◎「意味はわからない」独特の配列を発見
石野教授は、年ほど前、大腸菌リン酸代謝制御の分子機構研究を進める中で、一定のスペーサーを持つ、独特な繰り返し配列を見つけ、「衝撃を受けた」。1987年、この研究について発表した歳、論文には繰り返し配列のことも記載し、「生物学的な意味はまったくわからない」と記した。
大腸菌で見つけたこの繰り返し配列は、その後、別の研究者によって古細菌(アーキア)なとどにもあることがわかった。2002年、「CRISPR」の名がつき、後に免疫に関係することも明らかに。「CRISPR―Cas9」はアメリカの研究者によって開発された。
◎世界中に普及「CRISPR―Cas9」
CRISPR―Cas9によるゲノム編集は爆発的に普及し、作製されたさまざまな病気のモデル生物を使った、治療薬開発なども進んでいる。
ただ、遺伝子改変の正確性など、「医療への応用には、克服すべき課題も多い」と石野教授。「特許の問題もあるので、将来的には、CRISPR―Cas9を使わないゲノム編集技術ができればいいと思っているし、それを目指していきたい」とも話した。
純真学園大学学術講演会は、「先端医療の研究開発と将来展望」をテーマに毎年開かれ、今年で6回目。同日は、純真学園大学の天川雅夫・検査科学科准教授による「βグルカンと乳酸菌による腸管免疫の活性化を利用した機能性食品の開発」、金珍澤・放射線技術科学科講師による「T細胞受容体の多様性と機能性評価について」、一原由美子・看護学科教授の「異世代間交流が地域高齢者と大学生に及ぼす影響に関する研究」の3講演もあった。