地域ニーズと将来を見据えた新病院をめざす
1979年慶應義塾大学医学部卒業、同外科学教室入局。1991年医学博士。国立東京第二病院(現:独立行政法人国立病院機構東京医療センター)手術診療部長・外科医長、さいたま市立病院副院長などを経て、2014年から現職。
埼玉県の浦和、大宮、与野、岩槻の4市が合併した「さいたま市」の人口は約130万人。年々増加傾向にある。その市民の健康と安全を担うさいたま市立病院が、2020年1月に新病院を開院する予定だ。現代の医療に求められている地域完結型の総合病院として生まれ変わる。
―病院の役割について聞かせてください。
当院は、さいたま市における唯一の自治体立の総合病院であり、地域市民への一般診療を行うとともに、救急医療や急性期医療、周産期医療など政策医療に準じた医療活動を積極的に担っています。
地域の医療機関との連携強化にも早くから取り組んでおり、全国でも早い1992年には開放型病床(30床)を開設し、現在は47床に増床しています。近隣の医師会の「かかりつけ医」が院外主治医となり、来院して患者の診療情報を共有しながら両者で患者を管理していくという共同診療方式は、当時「浦和方式の病診連携」と言われ注目を集めました。開放型病床は、慢性疾患の急性増悪で緊急入院する方が多く、院内スタッフとかかりつけ医である地域の医療従事者らが連携して継続的医療を支援しています。
―2020年に新病院が開院予定ですね。
当院は4市合併以前の浦和市立病院の建物を改築・改修することなく、医療技術の向上や機能強化を進めてきました。しかし、建物の老朽化・狭隘(きょうあい)化が顕著となり、2010年に開催された「さいたま市立病院のあり方検討委員会」において、幅広い患者の受け入れ、人材確保などの面からも新病院が必要と判断されました。
新病院のコンセプトは「安心して暮らせるさいたま市のシンボル」であり、地域全体で市民の医療と健康を支える「地域完結型医療」をめざしています。
病床数は、現在の567床(一般537床、結核20床、感染症10床)に、新たに救命救急センター20床、精神30床、緩和ケア20床を加えた、計637床の予定です。
現在はER型二次救急病院として活動していますが、市内の救命救急センターはさいたま赤十字病院、自治医科大学附属さいたま医療センターのみであること、近年の救急搬送件数が増加していることなどから救命救急センターを新設します。これにより、市内の三次救急の対応が改善されます。
急性期医療においては、手術室の増室と高度化、さらにはICU、HCUの増床などを図り機能向上をめざします。また、精神科身体合併症対応病棟を新設します。がん治療では、放射線治療の整備、化学療法室の拡充、緩和ケアなど集約的治療の環境整備に力を入れています。
周産期・小児医療の強化も不可欠です。周産期外来と産科病棟、NICU、GCU、小児病棟を一つのフロアに集め、地域周産期母子医療センターとしての機能を発揮しやすくします。
そのほかにも、歯科口腔外科の新設など、バランスのとれた医療の提供をめざします。
―新病院に向けての取り組みや進ちょくの状況を。
新病院の建築は順調に進んでおり、患者さんもスタッフも開院を心待ちにしています。しかし、建物の美しさはやがてあせていきます。そうなっても地域や市民から支持される、すなわち当院が生き残っていくためには、高度な医療技術を提供できなければなりません。
そこで、手術支援ロボットを用いた外科手術の強化など、先端技術の導入を進めています。また、スタッフ教育の強化にも取り組んでいます。ほかにも、埼玉県はスポーツが盛んなことから、スポーツ医学の基盤づくりも始めています。時代や地域のニーズに則した総合病院づくりはすでにスタートしています。
さいたま市立病院
さいたま市緑区三室2460
TEL:048-873-4111(代表)
http://saitama-city-hsp.jp/