栄養に関するデータから日本の課題が見えてくる
1970年京都大学医学部卒業、同外科学入局。1980年同大学院修了(医学博士)。滋賀医科大学第2外科講師、同附属病院救急部助教授、同臨床看護学講座教授などを経て、2017年から現職。
大津市内を中心に、病院や介護施設などを有する医療法人華頂会グループ。その活動をけん引するのが琵琶湖養育院病院だ。田畑良宏院長はトップとしてマネジメントを担いつつ、臨床医として精力的に在宅患者のもとを訪れている。
―病院の特徴について教えてください。
当院をはじめ、介護老人保健施設やグループホームなどの居宅系施設、訪問看護ステーションといった訪問系施設など、多様な医療・介護サービスを提供する華頂会グループの中核を担っています。
また、看護師や介護福祉士を養成する二つの養成校を運営しています。グループ全体で医療、介護分野の人材育成に力を入れているのも大きな特徴でしょう。
琵琶湖養育院病院の前身となる「琵琶湖胃腸病院」の開設から50年余り。現在一般病床43床、医療療養病床111床での運営です。
滋賀県でも高齢化が進行し、この地域にも独居の高齢者や老老介護が増えています。当院は急性期病院や開業医との連携を密にしながら、高齢者医療における地域の中核病院としての役割を果たしていきたいと考えています。
訪問看護や訪問リハビリにも取り組んでいます。私自身もリハビリテーションの担当医として、在宅の患者さんを定期的に診療しています。
―職員の働き方をどう捉えていますか。
華頂会グループには全体で337人の職員が勤務しています。そのうち女性は253人。およそ75%を占めていますから、女性が力を発揮できる環境づくりが欠かせないのです。
その多くは20代、30代の若手が中心です。出産や育児と仕事との両立は、華頂会グループ全体としても大きなテーマです。
ニーズも高まっていましたので、職員用の華頂保育所を開設。この5年間でおよそ40人が活用し、職場復帰を果たしています。
また、介護福祉士などを養成する華頂社会福祉専門学校では、フィリピンやベトナムなど外国人の学生が増えつつあります。グループ内の各施設のスタッフについても、介護福祉士をはじめ、外国人の割合が大きくなっています。
「母国でも看護師として働いていた」といった医療職としての経験を持つ職員もいます。彼らの定着率を高めるためにも、住居の充実など、福利厚生面でのバックアップ体制も考えていかなければなりません。
患者さんはもとより職員のためにも新病院の建設を構想しています。約50年前の建物も使用していますし、増改築が多かったためか、動線があまりスムーズでない面もあります。新病院の建設はみんなの夢ですね。
―医師として力を入れてきたことは。
実家は平安時代から続く京都の寺。家を継ぐ傍ら京都大学工学部に入学し、在学中に医学部へ転部しました。当初は基礎研究に打ち込みたいという思いが強かったのですが、最終的には臨床の道に進みました。
その後、滋賀医科大学臨床看護学講座の教授として教育に携わりました。その中でも私が興味を持ったのが「食」。学生たちと食の問題を調査しました。
「国民衛生の動向」(厚生労働統計協会)では、都道府県ごとの出生率や食事のカロリー、そして栄養素別の摂取率などのデータが掲載されています。
私が注目しているのは炭水化物、たんぱく質、脂肪の摂取量と出生率の関係です。グラフからはこれらの栄養素の摂取量が増えると出生率は減少するという相関関係がうかがえます。つまり、栄養素の摂取量の抑制が、出生率を上げることにつながるかもしれない。そう考えています。
患者さんたちには、健康で過ごすためには飽食を避けること。「腹七分目」の状態で、ほどほどに空腹を感じることが大事なのだと伝えています。
医療法人華頂会琵琶湖養育院病院
大津市大萱7-7-2
TEL:077-545-9191(代表)
http://www.kachokai.or.jp/