見えない壁を取り払い進化し続ける医療総合大学へ
1972年大阪大学医学部卒業、同麻酔科。米ユタ大学レジデント、米カンザス大学研究員、大阪大学医学部助教授などを経て、1994年兵庫医科大学麻酔科学教授。同大学病院長、学校法人兵庫医科大学副理事長などを歴任した後、2018年10月から現職。
西宮市に兵庫医科大学と同大学病院、神戸市に兵庫医療大学、篠山市に兵庫医科大学ささやま医療センターなどを持つ医療総合大学。西宮キャンパスには今春、教育研究棟が完成。さらに、2022年の創立50周年、2025年の新病院棟竣工を目指し、グランドデザインが進む。
やりがいを持ち成長できる組織に
― 10月に理事長に就任されました。まず、抱負をお聞かせください。
大学にもコンプライアンスが求められる時代です。できる限り情報を開示し、開かれた大学を目指したいですね。一番心がけたいのは「フェアな運営」です。
学内的には、まず、組織体制や業務プロセスの見直しに取り組みたいと考えています。キャンパス間、診療科間などにある壁をできるだけ取り除き、風通しをよくすることが効率性や労働生産性の向上につながるでしょう。
例えば、学内のイントラネットをより有効に活用できないだろうか。各部署で作成しているマニュアルや委託業務の仕様などを共有できれば、仕事の妥当性が再検討しやすくなります。さらに共通化することができれば、業務の効率も上がるかもしれません。
同時に、職員がより成長できる制度を整えていきたいと思っています。資格取得支援やマネジメント教育をさらに進めて、個人がやりがいを持ち、自己啓発を続けていける組織にしたいですね。
大学病院というのは、病気を治し、命を救う急性期医療を主に提供し、教育してきました。これまではそれでよかったのかもしれませんが、今はQOLをいかに守るかといった点も大切になります。「地域包括ケア」の部分ですね。
その教育にもっと活用したいのが、老人保健施設や居宅サービスセンターがある篠山キャンパスです。医学部の学生だけでなく兵庫医療大学の薬学部・リハビリテーション学部・看護学部の学生、さらに卒後の人たちの育成と実践の場にしていきたいと考えています。
2大学のつながりで人材育成も充実
―兵庫医科大学と兵庫医療大学との協同の取り組みは。
チーム医療の中で力を発揮できる人材を育てるため、2大学の連携を一層、推し進めていきます。現在、学生は年に1週間ほど合同で勉強していますが、入学してから最初の半年〜1年を一緒に学ばせることはできないか、という構想を抱いています。
さらに、職員と教員の連携も考えられます。例えば看護学部の教員が病院の臨床現場で研修したり、逆に病院の看護師が大学で学生を指導したり。リハビリテーションの分野や薬剤師にしても同様です。
各地で大学同士の合併が進む中、今の「1法人2大学」体制を、今後どう展開していくのかも検討課題です。統合も一つの可能性として視野に入れつつ、そのメリットとデメリットを評価する時期に来ていると思います。
大学だけでなく、病院同士の合併も加速しています。患者さんを抱え込むのではなく、競争を避け、うまく機能を分担していくためには、アライアンスを結ぶ必要もあるでしょう。
例えば自治体病院の指定管理者になる、複数の病院に入ってもらって地域医療連携推進法人を運営する、協力して独立行政法人を立ち上げるなど、選択肢は多様です。将来的には、われわれもいろいろな方法が考えられると思います。
「顧客」の満足のためどう行動すべきか
―大切にしたい思いを聞かせてください。
私はもともと麻酔科医です。実は、空気も麻酔薬。空気の8割近くを占める窒素は麻酔薬の一つです。人類は常に浅い麻酔状態にいるので、いさかいなどがある、と書いている文献もあります。つまり、みんな誤りを起こす存在だということですね。ですから、「自分はおかしくないか」と顧みること、そういった謙虚さや、他人の意見を聞くスタンスが大事だと思っています。
私は、いろいろな場面で、「空気の麻酔作用を忘れないでほしい」という話をしています。経営についても同様で、独断でものを決めず、意見を聞いた上で判断したいと思っています。
また、法人にとって、大学病院の患者さんはもちろん顧客です。事務職員にとっては学生が顧客ですし、人事にとっては全職員が顧客。私にとっては、教職員も含め全員が顧客です。その顧客に満足してもらうためにはどう行動すべきか。そんな視点も忘れないようにしたいですね。
さらに、2025年には新病院棟竣工が控えています。そのためにも経営効率を上げ、財政基盤を安定させることが必須です。「自分には何ができるのか」を全職員一人ひとりが考え、行動できる組織にすることが目標です。
9月まで法人を率いた新家荘平・前理事長は「小医は病を医し、中医は人を医し、大医は国を医す」との言葉をたびたび使われていました。社会的な視野を持ち、相手の幸せを考えられる医療従事者を養成していけるよう、法人全体で取り組んでいきたいと思っています。
【学校法人 兵庫医科大学沿革】
- 1972年
- 兵庫医科大学開学
- 兵庫医科大学病院開設
- 1995年
- 阪神・淡路大震災により被災
- 1997年
- 兵庫医科大学篠山病院開設
- 1999年
- 兵庫医科大学リハビリテーションセンター開設
- 兵庫医科大学ささやま老人保健施設開設
- 2007年
- 兵庫医療大学開学
- 2010年
- 兵庫医科大学ささやま医療センター(旧篠山病院から改称)移転開院
- 2011年
- 兵庫医科大学ささやま居宅介護支援事業所開設
- 2015年
- 兵庫医科大学健康医学クリニック開設
- 2016年
- 兵庫医科大学ささやま居宅サービスセンター開設
学校法人兵庫医科大学
兵庫県西宮市武庫川町1-1
TEL:0798-45-6111(代表)
https://www.corp.hyo-med.ac.jp/