中津市で開院 身近な泌尿器科に
1997年熊本大学医学部卒業、福岡大学医学部泌尿器科学教室入局。福岡大学病院、熊本大学医学部附属病院、にしくまもと病院を経て、2018年から現職。
2018年12月、大分県中津市に泌尿器科専門のおおたにクリニックが開院した。大谷将之院長は21年間、排尿障害のスペシャリストとして診療と研究に従事。誰もが気軽に利用できる"敷居の低い泌尿器科"を目指している。
―泌尿器科を専門にしたきっかけは。
熊本大学泌尿器科に入局した当時、准教授をされていた吉田正貴先生に影響を受けました。吉田先生は排尿障害の権威です。先生の仕事に対する姿勢に感銘し、この方についていこうと思ったのです。
20代後半から30代前半は、排尿障害の基礎研究に明け暮れました。加齢による低活動膀胱を遺伝子治療で打開できないかという研究を4年。さらに前立腺内尿道に、尿道を開く遺伝子を入れて機能するかという研究を行い、2011年に日本排尿機能学会の排尿障害専門学会で学会賞をいただくことができました。
30代は臨床、特に手術を数多く手掛けました。やがて、逆に手術以外のアプローチが必要な患者さんに対する思いが強くなったのです。術後の改善が見られなかったり、そもそも手術を受けられない患者さんが置き去りになっている現状に気付いた。ほとんどの泌尿器科医がやっていないことにチャレンジしたかったという気持ちもありました。
その後、熊本にあるケアミックスの病院に就職しました。同院で内科医長を経験したのは、大きな糧になりましたね。排尿障害の原因は、内科的な病気が圧倒的に多いのです。例えば生活習慣病、糖尿病、高血圧、心臓病。さらには脊柱管狭窄症や、骨盤臓器の術後トラブルなども排尿障害の原因となります。これらは、とても泌尿器科の診療だけではカバーできません。内科診療を勉強できたことで、排尿障害の症状だけを見るのではなく、その裏にある原因を突き止めて根本治癒を目指せるようになり、診療の質が大幅に向上しました。
同院ではリハビリも行っていたのですが、「訓練して取り戻す」という方法に活路を見出しました。排尿障害も薬や手術で治らなかったら、ケアやリハビリというものがあるではないかと。それから排せつ・排尿のリハビリを先んじて行っている病院で研修を受け、知識や技術を磨きました。
2016年度、日本排尿機能学会が認定医制度をスタート。私も初年度に認定をいただき、学会のシンポジストや座長を務めました。健康教室の開催など泌尿器科の啓発活動を続け、排尿障害の専門家を自負できるまでになりました。
―開業について。
中津市は、小学校時代を過ごした場所です。泌尿器科の病院はあるけれどクリニックがなかったので、ぜひつくってほしいと地元からの要望がありました。
ただ、泌尿器科は足がむきにくい診療科。特に女性は受診しづらいと感じています。そこで当クリニックは、梶垣建築事務所の設計で、教会をイメージした居心地の良い待合室を目指しました。天井を高く、窓は大きく取り、光が降り注ぐ開放的な空間です。トイレは1階だけで4カ所設けるなど、患者さんに配慮した造りを心掛けました。
排尿障害・排せつ障害というのは、人の尊厳に関わる問題です。尿もれに悩むと自信を失い、家に閉じこもりがちになる。一方で、デリケートで人に話しにくい病気でもあります。本当に遠慮なく、気軽に来院してほしい。予防のための啓発活動も、学校や幼稚園、保育園にも出向いて、ますます精力的に務めていきたいですね。
おおたにクリニック
大分県中津市沖代町2-119-2
TEL:0979-85-1182
https://otani-cl.jp/