【学会リポート】第42回日本高次脳機能障害学会学術総会

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Neuropsychological Rehabilitationの原点とトピック

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 12月6日、7日、神戸国際展示場で「第42回日本高次脳機能障害学会学術総会」が開かれた。会長は神戸大学の種村留美教授(生命・医学系保健学域リハビリテーション科学領域運動機能障害学分野)。言語聴覚士と作業療法士を中心に、2日間で約2,300人が参加した。



【会長講演】
神経心理リハビリテーションの原点 ―症例研究から核を見出す―
種村 留美(神戸大学生命・医学系保健学域 リハビリテーション科学領域運動機能障害学分野教授)

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「本人にとって重要な行動」の支援がポイント

 神経心理学によるアプローチで「症状の核」に迫り、効果的なリハビリテーションにつながった症例を報告。

 急性心筋梗塞や脳梗塞を発症した一人暮らしの男性。自力での歩行は可能だが、上肢に不全まひが残った。家事をこなすことが難しくなり、ひげそりや、リモコンでテレビのスイッチを入れるといった簡単な動作もできなくなった。

 「作業療法士が一つ一つの日常動作に介入。好きなテレビを楽しむためのリモコンの操作ができるようになった。障がいと向き合いながら生活するにはどうしたらいいのか、患者さんと一緒に考えることが大切。"本人にとって重要な意味をもつ行動"を支援することがADL向上のきっかけになる」と種村氏。

 また、脳梗塞を発症して自転車で転倒し、右不全まひが残った患者は、モノや言葉の「意味」が分からなくなる「意味記憶の障害」に悩んでいた。

 「これは紙やすりです。これは爪切りです。木の表面をなめらかにしてください。爪を切ってみてください―。モノの名前、用途を説明し、作業療法士が手本を示した後、患者さん自身に行ってもらう。こうした訓練を数回くり返すと、スムーズに道具を使えるようになっていった」

 家族の協力を得て家庭でも継続することで、さらに効果が高まったという。

 視線が一方向に固着することで周囲のモノが見えなくなるといったバリント症候群。字を書けなくなったり、左右が分からなくなったりするゲルストマン症候群。

 脳出血後、これらを合併したケースに対しては、「座面を手で確認してからイスに腰掛ける」といった具体的な指示によって「方向イメージの再獲得」を促し、症状の改善へと導いた。

 患者が直面している問題や取り巻く環境などを細かく分析し、解決策を探る認知行動療法の手法「ケースフォーミュレーション」。その実践には「生活の包括的な支援が必要」と種村氏は強調する。

【特別企画 招宴講演2】
Flavor of Life 〜当事者が語る高次脳機能障害から珈琲マイスターまでの軌跡〜
佐藤 亮太

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さまざまな挑戦の機会を得た

 交通事故によって高次脳機能障害の当事者となった佐藤亮太氏は、自身がどうやって立ち直ったのかを語った。

 事故後コーヒーマイスターの資格を取得。友人から事故の見舞いとしてコーヒーメーカーと豆を贈られたことがきっかけだった。「豆によって味わいがまったく異なることに驚かされた。コーヒーの香りでリラックスでき、リハビリにも集中できるようになった」と振り返る。会場では、同氏がブレンドしたコーヒー「フレーバー・オブ・ライフ」が来場者に提供された。

 治療を続ける中で「元通りの体に」という願いは難しいことを知った。そこで、何ができて、何ができないのか。さまざまなことに挑戦しようと考えた。

 サントリーが主催する「1万人の第九」へ参加した。サックスを奏でられるようにもなった。コーヒーマイスターの資格取得もその一環だ。

 「このような挑戦の機会を得たことで自分の障がいを前向きに捉えられるようになった。一人で悩みを抱え込み、外に出ることに消極的になってはいけない」とエール。「今後は同じ障がいの方々に寄り添う活動にも力を入れていきたい」と抱負を語った。

【最旬講演】
コミュニティーにおける認知症のリハビリテーション
池田 学(大阪大学大学院医学系研究科精神医学教室教授)

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チーム医療がもっと求められる

 国内の認知症高齢者は500万人を超え、軽度認知障害(МCI)も同程度いると言われている。今後は「コミュニティー」での支援がますます重要となる。これまで池田学氏が熊本大学と大阪大学で取り組んだ例を紹介した。

 熊本大学の調査で、若年性認知症は地域の介護サービスになかなかつながっていない現状が浮き彫りとなった。「介護サービスが高齢者を前提としていること、介護者に若年性認知症の知識が乏しいことなどが背景にある」と池田氏は指摘する。

 集団で行う改善プログラムの企画、臨床心理士やソーシャルワーカーによる家族教育に注力。介護サービスの利用率などが高まったという。

 大阪大学では、レビー小体型認知症に対して多職種での介入を試みた。短期入院で患者の状況を把握し、支援の方向性を検討。さらに医師や看護師、作業療法士、ケアマネジャーが自宅を訪問し安全に暮らすための環境を整えた。「ADLの維持、安全の確保のため適時サポートし、毎年、ご家族もまじえて介護プランを見直している」。

 池田氏は改めて「廃用症候群などの負の連鎖を断つこと、チーム医療で支えることが重要」と訴えた。


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