県西部の産婦人科医療を支えるためには
1986年浜松医科大学医学部卒業、同産婦人科入局。1990年同大学院卒業(医学博士)。浜松医科大学医学部附属病院産婦人科、米ボストン小児病院神経科研究員、聖隷浜松病院産婦人科などを経て、2013年から現職。
妊娠や分娩を中心に、女性特有のがん検診なども実施。静岡県で唯一の産婦人科単科病院として、県西部地域の中心的な役割を担う。成瀬寛夫院長は「女性の一生をグループ全体でサポートすることを目指している」と語る。
―40年を超える歴史。
1972年、現理事長の臼井溢先生が「ウスイ産婦人科医院」を開設したのが始まりです。歴史が40年を数え、より総合的な産婦人科医療に取り組むことを目的に、2012年、病院として新築。名称も「かば記念病院」と改めました。
この周辺が「蒲(かば)地区」と呼ばれていることや、多産で子育てが上手だと言われている動物の「かば」にも由来します。
産科では妊娠や出産、そして婦人科では女性向けのがん検診やグループ病院での婦人科腹腔鏡手術センター開設など、産婦人科の1.5次医療を担っています。
県西部地域では、総合病院での出産が増加する一方で、産科クリニックなどの数が減少する傾向が少なからずあります。
そのような中で、われわれは患者さんの妊娠や分娩を担う県内唯一の産婦人科単科病院です。きめ細かなサポートによって、妊産婦に寄り添いたいと考えてきました。
―特徴は。
県内に病院や医療職の養成校などを有するグループであることが強みです。
急性期を担う十全記念病院(浜松市)や新都市病院(磐田市)、看護学科や助産学科などがある静岡医療科学専門大学校を運営しています。発祥は産婦人科医院ですが、多様な役割が必要とされ広がっていきました。
また、産婦人科病院を運営するにあたってグループ病院があることは大きなメリットです。分娩に備えるには当直など一定数の産科医の確保が必要です。同時に考えなければならないのは、分娩がない時間に産科医にどう動いてもらうか。収益に直結する課題です。
当院のグループ病院にも産婦人科がありますので、分娩がない場合は当院以外のグループ病院で検診などに出向いたり、診療業務の応援に入ってもらったりします。そうすることで単科病院だけでは難しい医師の数の確保が比較的スムーズになります。
また、静岡医療科学専門大学校の助産学科や看護学科の学生は当院で臨地実習を経験します。現場の助産師や看護師も実習指導に当たりますので、最新のガイドラインを学んでおく必要もあり、指導のための自己研さんを継続しています。現場にとっても大変有益だと思います。
―心がけているのはどのようなことでしょうか。
産前産後のフォローに力を入れています。近年、産後うつなど出産後のマタニティーブルーが社会問題化しています。
私たちは出産前から産後1年間は両親学級、マタニティービクス、ママのサークル活動などの取り組みによって、母親たちが病院に足を運ぼうと思える機会を多くつくることに努めています。
特に、産後は「産みっぱなしにさせない」をテーマに、助産師、看護師がサポートするシステムを構築しています。退院後の1週間健診は2016年からスタートしました。
日頃からイベントなどに参加していただいて助産師や看護師と信頼を深めることで、何かあった時に気軽に来てもらえるような関係になれると思います。
悩みを一人で抱え込まずに「かば記念病院に行けばなんとかなる」と思ってほしいですね。
また、助産師、看護師も患者さんの日常生活に関わることでやりがいを感じ、それがモチベーションにもつながると思います。
2018年1月に法人内に開設した婦人科腹腔鏡手術センターでは、婦人科疾患にも対応できる環境を整えました。「女性の一生を守る」という産婦人科病院の使命を果たしていきます。
医療法人社団明徳会 かば記念病院
静岡県浜松市東区神立町570
TEL:053-461-0612(代表)
https://www.kaba-san.org/