東京大学大学院医学系研究科 産婦人科学講座 大須賀 穣 教授

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女性の一生涯の健康と「子宮内膜症」の関連性

【おおすが・ゆたか】
1985年東京大学医学部卒業、同産婦人科学講座入局。医学博士。米スタンフォード大学留学、東京大学大学院医学系研究科産婦人科学講座准教授などを経て、2013年から現職。

 2019年1月19日から2日間、「子宮内膜症と女性の健康」をテーマに、第40回日本エンドメトリオーシス学会学術講演会が東京で催される。開催に先立ち、学会長である大須賀穣教授に子宮内膜症の現状と課題について話を聞いた。

―なぜテーマが「女性の健康」なのでしょうか。

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 不妊治療、月経痛以外に、全身にわたるさまざまな症状にも注目していきたいと考え、「女性の健康」をテーマに設定しました。

 子宮内膜症は生殖年齢である20〜50歳の1〜2割で見つかり、現在受療者数は十数万人にも上っています。症状の多くは月経痛、不妊症の二つですが、近年では卵巣にできるチョコレート嚢胞ががん化しやすいこと、妊娠すると早産、流産、前置胎盤や産科出血など、さまざまな合併症を引き起こしやすいことが分かってきました。

 ほかにも心血管疾患や脳梗塞も増えるといったデータも出てきています。因果関係はまだはっきりしていませんが、これらの生活習慣病を含めて、全身にわたって女性の健康に幅広く影響を及ぼす可能性が出てきました。

 特に注目されているのが、胸部の子宮内膜症。「月経随伴性気胸」と言いますが、月経時に気胸を起こしている人のうち、かなりの割合で子宮内膜症が関連していることもわかってきました。さらに直腸や膀胱にもできるといわれ、それらを「稀少部位子宮内膜症」として、最近ガイドラインを発刊したところです。

 今回の学術講演会では、この「稀少部位子宮内膜症」についての解説も目玉になっています。

 これまで子宮内膜症は、手術で治すと考えられてきましたが、実は再発率が高く、妊娠合併症も少なくありません。「一生涯の疾患」として、治す病気から「適切に管理する」病気へと意識を変えていかなければと考えています。

 また、予防的な視点に軸足を移す必要もあります。例えば、低用量ピルの服用を続けると子宮内膜症の発生頻度が低いことも最近わかってきました。さらには、早期発見、早期介入について考えていくことが必要な時代にもなってきたと思います。

 ただ、まだまだ認知が行き届いていないという課題もあります。今回の講演では啓発、教育について力を入れていこうと考える国会議員の方、厚生労働省、経済産業省、産業医、健診センターの方にもお越しいただき、必要性を広めていきたいと考えています。

 日本の少子晩産化は、子宮内膜症の増加と密接に関係しています。この非常に多い子宮内膜症患者を考えると、日本の国民病といっても過言ではありません。さらに子宮内膜症は、女性の活躍を妨げており、医師だけではなく、官民が一緒になって取り組まなければならない問題にもなっています。今回の学会では、「月経関連の就業への影響」についてのシンポジウムも開きます。

―今後の産婦人科のあり方についてどのようにお考えですか。

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 産婦人科には生殖医療、がん診療、産科そして女性医学がありますが、この総合内科的な「女性医学」が最近では非常に重視されてきています。

 「産婦人科とは女性に寄り添う科であり、女性の一生をみる科である」。これこそが、これからの産婦人科のあり方だと捉えています。さまざまな婦人科疾患に対応するために、他の診療科との連携も増えてきています。

 女性は未病から疾患に至るまで、ホルモンと関連する体調不良が非常に多く、それらをトータルにケアするのが産婦人科医の役目です。予防的な意味を含めて、大事なのは「女性のホルモンの変動に着目すること」。これらの意識を広め、健康リテラシーを上げていくことを目指し、社会全体の課題として取り組んでいければと思います。

東京大学大学院 医学系研究科 産婦人科学講座
東京都文京区本郷7-3-1
TEL:03-3815-5411(代表)
http://plaza.umin.ac.jp/tkyobgyn/recruit/


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