九州大学大学院 歯学研究院 口腔機能修復学講座 歯周病学分野 西村 英紀 教授

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多様な疾患に関わる歯周病 再生治療の研究進む

【にしむら・ふさのり】
1985年九州大学歯学部卒業。岡山大学歯学部、米コロンビア大学留学、広島大学大学院医歯薬学総合研究科教授などを経て、2013年から現職。

 50代以上の日本人のうち約8割が感染していると言われる歯周病。糖尿病や心臓病などにも影響することが分かっているという。近年は組織再生術も進歩し、歯周病に関する施術はめまぐるしく変化している。

―歯周病治療の現状を。

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 歯周病は生活習慣病を発症しやすい50〜70代に多い疾患で、成人の約8割が罹患していると言われています。実際に診察していると50代までの患者さんの多くは女性。男性は仕事を退職するまで歯科検診にはなかなか来ません。男性は来院したときには、すでに歯周病が進行しているケースが多く見られます。

 初期段階の歯周病の方には、普段の歯磨きで効果的に細菌を除去できる方法を指導。歯周病が進行すると歯周ポケットが深くなり歯ブラシの毛先が届かなくなってしまうので、歯科医などが器具を使って細菌を取り除きます。それでも炎症が取れない場合は歯肉を切開する。細菌塊と感染している組織を除去します。

 再生治療という方法もありますが、組織の破壊状況によっては適用できません。歯根に沿って切れ込みを入れたように歯が溶ける「垂直性骨吸収」は再生治療の範囲内ですが、歯肉が後退して複数の歯根がまんべんなくむき出しになる「水平性骨吸収」では治療できません。

 歯周病は狭心症、脳梗塞など全身の疾患と関係があります。中でも糖尿病と歯周病の関係は密接です。

 体内のどこかで炎症が起きていると、インスリンの働きが弱まって血糖値が高くなる。太っている人が糖尿病になりやすいのは内臓脂肪が体内で炎症を起こしているからです。

 歯周病も口内が細菌に感染し炎症を起こしている状態ですから糖尿病の進行を早めてしまいます。糖尿病患者は内科と歯科、両方を受診することが大切です。

 九州大学病院には糖尿病患者さんが自身で血糖値を抑える生活をサポートする「教育入院」制度があります。その方々に向けて月に一度、歯周病教室を開いています。希望者は歯科検診を予約することもできます。

 他には、外科手術前に歯科治療を受け口内細菌を減らして術後の肺炎やその他の合併症を防ぐ「周術期口腔ケア」があります。2014年には「周術期口腔ケアセンター」を設置しました。対象となる患者さん全員に口腔内の清掃が徹底できるよう、センター化して受け入れ体制を整えたのです。希望があれば病室まで出向いて診療しています。

―現状の課題と目標は。

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 現在の歯周病治療では、歯を支える歯槽骨まで溶けてしまうと再生はできません。将来は、歯を支えている組織を再生させる方法を確立させることが必要でしょう。

 現在、幹細胞を使った再生治療の研究を進めています。幹細胞をそのまま他の細胞に分化させようとすると、時間がかかるうえ定着しない恐れもある。幹細胞が分化する際に分泌する物質を取り出し、歯や軟組織が失われた部分に塗布すれば既存の細胞が分裂し再生するのではないかと予想しています。この研究が進めば、歯だけでなく歯槽骨や下顎骨の再生にも適用できるはずです。すべての歯周病患者の歯を支える組織を元通りにすることが私の願いです。

 課題は患者さんと歯科医師の高齢化です。患者さんは通院が難しくなり、歯科医は訪問診療が思うようにはできなくなっていく―。へき地や過疎地域の場合、大学病院からの派遣も現実的ではありません。地域に若い歯科医師の力が必要だと思います。

 今年から学生実習に訪問診療を取り入れました。初回は在宅医療に力を入れている、原土井病院の歯科に協力を依頼しています。これから在宅診療の実習は必要科目になるでしょう。全国にこの取り組みが広がることを期待しています。

九州大学大学院歯学研究院口腔機能修復学講座 歯周病学分野
福岡市東区馬出3-1-1
TEL:092-641-1151(代表)
http://www.dent.kyushu-u.ac.jp/perio/


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