"徳のある医療"の力を信じている
大阪府北河内地区で2病院を運営する社会医療法人信愛会。2015年に就任した若きリーダー吉川将史理事長は「職員の知恵を集め、満足度の高い病院づくりを目指す」と言葉に力を込める。
―2病院の特徴は。
畷生会脳神経外科病院のある四條畷市、交野病院のある交野市には市民病院がありません。当会の2病院は、それぞれ脳神経疾患、脊椎・脊髄疾患という専門性を持ちつつ、地域医療の担い手でもあります。
畷生会脳神経外科病院の顧問を務めるのは、頭蓋底手術において世界的にも高い評価を得ている福島孝徳先生です。
勤務する専門医たちは先生による海外レベルの指導を受けて経験を積んでいます。さらに個々に工夫を凝らし、より高い技術の習得を目指しています。
8月、血管内治療をスタートさせました。t-PA治療(血栓溶解療法)が無効な場合などに、カテーテルによって血栓を回収する「血栓回収療法」を導入。また、脳卒中ケアユニットを開設し、脳卒中急性期の管理を徹底しています。
1965年、交野市私部に開院した交野病院は2015年、2度目の移転を果たしました。もともと畷生会脳神経外科病院に併設されていた「信愛会脊椎脊髄センター」を移設。脳神経外科と整形外科のチーム医療を推進しています。
最新の機器を駆使し、併設のリハビリ病棟とも密に連携。的確な診断から患者さんの状態に合わせた治療法の提案、術後の速やかなリハビリまで可能です。現在、年間の手術件数はおよそ800件。1000件を超えるのが目標です。
―理事長に就任されたのは大学を卒業してすぐ。
当初は右も左も分からない状態だったのが正直なところです。経営状態も芳しくなく、厳しい状況にありました。それでも周囲に支えられ、徐々に上向かせることができました。
その要因の一つは、私自身も理事長を務めながら脳神経外科医として定期的に当直やオペを担当し、職員と共に現場の感覚を共有できているからではないかと思います。
法人内のすべてのことを私一人が決断し、徹底していくのは難しいでしょう。誰もが自由に意見を出し、しっかりと話し合える環境づくりは、強く心がけていることの一つです。
そうした中で、各部門がおのずとマネジメントできる風土が出来上がりつつあります。この数年間で実感しているところです。
―昨年9月、副院長に看護部長を抜てきされました。
創設から30年を超える畷生会脳神経外科病院の歴史の中で、初めての看護職の副院長です。
病院は女性の力がなくては成り立ちません。看護師をはじめ、離職率の低減は大きなテーマです。出雲幸美副院長のミッションは外来や病棟に勤務する職員たちの声を吸い上げ、勤務環境の改善や教育面の取り組みに生かすことです。
学会やセミナー参加の費用を負担するなど、職員の意欲に応えるための制度も積極的に整えています。日本看護協会の調査によると、看護職の離職率は常勤で10.9%。畷生会脳神経外科病院では6%程度を維持しています。
―大切にしていることは。
理想は「徳のある医療」です。論語で「徳は孤ならず必ず隣あり」と唱えられているように、自分が信じる「徳のある行動」を続けていれば、困った時に必ず助けてくれる人が現れると思うのです。
それは、職員に対しても患者さんに対しても忘れてはいけない。ある患者さんの受診後、その親戚の方々が次々とお越しになりました。そんなふうに、人口5万人ほどのここ四條畷市では、人のつながりがどんどん広がっていくのです。当会の病院に「行って良かった」という患者さんを増やしていきたいと思います。
社会医療法人信愛会 畷生会脳神経外科病院
大阪府四條畷市中野本町28-1
TEL:072-877-6639(代表)
http://www.tesseikai.jp/