救急医療体制の盤石化を目指して
山積する課題に立ち向かいながら、一つ一つ打開策を提案し、県北エリア全体の最後の砦(とりで)として、救急医療体制の盤石化を目指す―。宮崎県立延岡病院救命救急センターの長嶺育弘センター長の思いは。
―救命救急センターの特徴を教えてください。
当センターは、宮崎県の北部エリア全域をカバーする行政型基幹病院の附属施設です。県立延岡病院は、災害拠点病院で、災害時には当センターが中枢となって医療活動を統括します。
現在、日勤は3人の常勤救急医と3〜4人の研修医で、夜間や休日は、その他の診療科の先生方と連携して救命救急センターを運営しています。
2017年度の年間救急受け入れは、6456件。その中で、救急車での搬入は3129件、ドクターヘリでの搬入は53件でした。30万人を抱える地域唯一の救命救急センターとしては、比較的少ない救急患者の数です。
2009年の医師の大量退職に伴い、地元延岡市議会が2009年9月に「延岡市の地域医療を守る条例」を可決。市民、医師会、行政が結束して地域医療を守ろう、不要不急の救急搬送を止めようと活動してきた成果だと言えます。
―今春、導入されたドクターカーは。
利用は合計で20件程度です。導入後、救急患者の処置に触れ、その有効性を実感した看護師が救急医療を志望するケースが増えていると感じます。医師だけでなく、多くの医療スタッフが救急医療に興味を持ち、専門性を高めることは、今後の救急医療において大きくプラスに作用します。
現在のドクターカーは、延岡市単独で運用しており、搬送するのは主に市内の患者さん。そこで、県北エリア全体をカバーできる当センター専属のドクターカーを導入したいと考えています。まだまだ計画段階ですが、数年後の稼働に備え、人材育成を急ぎたいと思います。
ただ、ドクターカーだけでは不十分です。宮崎県は、南海トラフ地震が発生すると、死者3万5千人〜4万2千人の被害が予想され、その7割が県北地域の住民とされています。県北は、海と山に囲まれ急峻な細い道も多く、より多くの人々を迅速に救出するには、ドクターヘリが必須です。専属ドクターカー導入後、数年以内には県内2機目のドクターヘリを県北エリアで導入し、地域の救急医療体制を盤石にしていきたいと考えています。
今年8月、内閣府主導の「大規模地震時医療活動訓練」に参加。当院の幹部クラスもほぼ全員参加し、医師会や行政のみならず、消防との連携や災害時の指揮系統の確認、DMAT訓練を実施しました。
今年11月には当院事務職員に対する救命救急訓練を、12月にはNBC災害を想定した訓練を実施予定です。延岡市は化学工場が多数ありますので、化学物質による特殊災害に対する備えも強化すべきだと考えています。
センター長として最も重点を置いているのは、「救急医療体制の盤石化」です。当センターで理想的な救急医療を提供するためには、少なくともあと3人の救急医が必要。しかし、現実には他科の先生にご協力いただいている状況です。その中で「どう救急医療の質を向上させていくのか」がとても大切なポイントです。
また、日常診療の中で、夜間当直を担当する機会の多い研修医のレベル向上を常に念頭に置きながら指導しています。研修医に対して救急医のやりがいを伝えることにも注力しています。
目の前で患者さんが劇的に快方に向かう姿を目の当たりにすること、診断・治療した後、患者さんやその家族の安心した顔が見られること...。救命救急には、医療人として強い魅力があります。それを感じてほしいと願っています。
宮崎県立延岡病院 救命救急センター
宮崎県延岡市新小路2-1-10
TEL:0982-32-6181(代表)
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