地域への信頼感を高め 育成面でも力をつけたい
2015年、二つの市民病院(知多市民病院、東海市民病院)が統合。「公立西知多総合病院」として地域の急性期医療を担う基盤が整った。2019年、放射線治療施設の完成をもって、トータルながん医療の提供も可能となる。浅野昌彦院長に現状を聞いた。
―どのような点を重視した運営を。
開院時に掲げた柱は「質の高い医療の提供」「断らない救急医療」「地域医療連携の強化」の3本です。
まず「質の高い医療の提供」については、最新のCTやMRI、脳・心臓血管撮影装置などをそろえ、画像診断、治療の精度を高めました。
また、31ある診療科の全体的な底上げを図り、専門医の配置に注力。特に、高齢化が進む当地域において求められる脳卒中、心筋梗塞といった循環器疾患に対する受け入れ体制を充実させ、迅速な血栓溶解療法(t-PA治療)など、地域にしっかりと安心を届けられるよう努めました。
当院の入院患者さんのうち7割を65歳以上が占めており、75歳以上に限ると5割を超えています。
ADLの低下を防ぐために、早期からリハビリテーションチームのほか、栄養サポートチーム(NST)、認知症サポートチーム(DST)が介入します。安全な入院生活を送っていただくとともに、在宅復帰後の暮らしを見据えて各チームが連携しています。
―救急の状況について。
知多半島北西部の中核病院として、24時間、最大限の医療を提供するという決意で臨んでいます。
平日の日勤帯では救急科が、夜間と休日は数人の研修医と内科系医師1人、外科系医師1人がファーストタッチを担います。各診療科へのオンコール体制により、専門性を要する治療にも対応可能です。
2017年度の救急車の受け入れ台数は5483台でした。二つの旧病院の合計と比較して、2倍近くの実績に相当します。
職員の目線を合わせ「断らない救急医療」への意識が高まるにつれて、不応需率は1.1%にまで低下しました。以前は、東海市に隣接する名古屋市へ患者さんが流出する傾向にありました。この地域への信頼を高めていくことで、少しずつ改善に向かうのではないかと感じています。
「患者サポートセンター」を軸にして、入退院支援部門の強化を進めてきました。入院前の服薬状況やご家族の構成、生活状況のていねいな聞き取り、スムーズな退院調整、そして退院後に必要な支援の準備までを含めて、センターがきめ細かに対応しています。
当院の逆紹介率は98.1%。開業医の先生方との関係も深まっており、地域完結型医療の構築に向けて一丸となって前進できていると思います。
11月、当院は「地域医療支援病院」に承認される予定です。地域の勉強会や講習会などの実施も活発化させ、病診連携をさらに強化していきます。
―建設中の放射線治療施設の特徴は。
2019年4月に稼働する予定です。「IMRT(強度変調放射線治療)」ができる装置を導入します。
放射線治療についてはこれまで他の医療機関の力を借りる状況が続いていましたが、新施設のオープンによって早期発見、手術、化学療法、放射線療法、緩和ケアまで、がん患者さんの要望にトータルに応えられる病院に進化します。がん診療連携拠点病院の指定を目指しています。
当院の開院から丸3年をかけて、医師をはじめとする人材の確保に力を入れてきました。しかし、まだ十分ではありません。
引き続き医療者の採用活動を重点的に進めていくとともに、「しっかりと育成できる医療機関」としての力も高めたいと思っています。研修医の指導体制をより整備し、ぜひとも情熱にあふれた医療者を輩出していきたいですね。
公立西知多総合病院
愛知県東海市中ノ池3-1-1
TEL:0562-33-5500(代表)
http://www.nishichita-hp.aichi.jp/