難病を強みの一つに 県の拠点センターを目指す
限られた医療資源で、ニーズにどう応えるのか―。埼玉県は、2017年の厚生労働省発表で、国民1人当たりに対する医師、病床数がともにワーストだった。織田弘美病院長は、関連法人や地域の医療機関との連携を強めながら、この課題に立ち向かう。
―「ネットワークづくり」に力を注がれています。
地域医療、特に病診連携では「埼玉医科大学・連携施設懇談会」を年2回開いています。埼玉医科大学国際医療センター、総合医療センター、大学病院の3病院が持ち回りで春と秋に開催します。
もう一つは、紹介患者報告会として「診療連携シンフォニー」を実施しています。基調講演で当院の医師が最新の治療の動向を説明。その後、地域の先生方に紹介いただいた患者さんを何人かピックアップして経過などをフィードバックします。
病院長に就いた2016年には、病病連携の「埼玉県西部地区の病院ネットワークを考える会」を立ち上げました。登録した病院間でお互いの空床状況を毎日共有。当院で急きょ病床が必要になったり、登録病院の患者さんの状態が急激に悪化したりといった場合に、現場の病棟医長や担当師長が転院先を検討する材料として活用しています。
ほかにも、「カルナ予約システム」を導入しています。連携する地域のクリニックの先生方がインターネットを介してCT、MRIなどの検査を大学病院に直接申し込める。診察中に検査の空き状況や患者さんの都合を確認しながら、直接予約できるため、開業医の先生方からの評判もよく、検査日に受診もできるため、患者さんの通院回数を減らすことにもつながっています。
埼玉医科大学の関連法人である社会福祉法人埼玉医療福祉会は、昨年10月、地域包括ケアシステム構築の拠点とすべく「MORO HAPPINESS館」を開設し、外来と在宅医療部門を集約しました。同福祉会は重症心身障がい児者に対する医療や教育にも取り組んでいます。グループ内での連携も強めていきたいと思っています。
―病院の今後の展開として考えていることを。
一つ目は、「難病」を強みとした総合センターになること。埼玉県内に住むあらゆる「難病」の患者さんから、この病院に来れば何とかなる、と頼っていただける場所にしていきたいという思いがあります。
当院は2015年4月に「難病センター」、2017年4月には「てんかんセンター」を立ち上げました。2009年4月に開設した「アレルギーセンター」は今年3月、県のアレルギー疾患医療拠点病院に指定されています。
さらに「ゲノム医学研究センター」では昨年10月、産学官共同研究「FOP(進行性骨化性線維異形成症)に対する革新的治療薬の創出」を開始しました。遺伝性・難治性希少疾患であるFOPで起こる過剰な骨形成を抑制する治療薬の開発を目指しています。
二つ目は、運動器症候群(ロコモ)やフレイルと呼ばれる虚弱な高齢者を支える仕組みを作っていくことです。今年4月、「緩和医療科」を立ち上げました。がんの患者さんへの緩和医療だけでなく、高齢者の終末期医療も担っています。救急で運ばれてくる患者さんにも救命救急科と緩和医療科が連携して対応。そのため、現在は両科のメンバーがお互いに兼務する形で在籍しています。
「高齢者医療」はこれからのキーワードの一つです。私が目指すのは「健康寿命=寿命」となる「ピンピンコロリ」。2019年度には、ロコモティブシンドロームとフレイルをターゲットにした「ロコモフレイル(ロコフレ)予防センター」を立ち上げる計画もあります。治療だけでなく健康維持にも貢献していきたいと考えています。
埼玉医科大学病院
埼玉県入間郡毛呂山町毛呂本郷38
TEL:049-276-1111(番号案内)
http://www.saitama-med.ac.jp/hospital/