世界・地域・職員を見て三つの理念を実現する
阪神・淡路大震災からの復興をテーマに再開発された街「HAT神戸」にある神戸赤十字病院。神戸市中央区をはじめとする市東部地域の急性期・救急医療を担う。今年、山下晴央新病院長が就任。災害拠点病院としての役割を含め、抱負を聞いた。
―病院長として、これからどのような取り組みを。
「世界に発信する病院」「地域から選ばれる病院」「職員が働いて良かった病院」という三つの理念を達成することが責務だと考えています。
「世界に発信する病院」としての目標の一つが、医師の海外での学会発表を増やすこと。そのほか、赤十字の海外活動に積極的に看護師などを派遣し、現場を体験してもらう機会を増やしたいとも考えています。
二つ目の「地域から選ばれる病院」になるには、近隣に住む方々に「神戸赤十字病院に行けば何とかなる」と思ってもらわなければなりません。開業医の先生から患者の受け入れを要請されたら、すぐに対応できるような体制をつくりたいと準備を進めています。
「職員が働いて良かった病院」は、地域から選ばれる病院になるためにも必要な要素です。業務改善委員会を設け、職場環境の改善に努めています。医師に関しては、当直勤務の翌日はできるだけ午後には帰ってもらうよう各部長にも要請しています。
今後は、若手医師の育成にも、力を注いでいきたいと考えています。当院を一度離れた人にも、また戻ってきてもらえる、そんな病院にしていければと思います。
―強みだと感じる分野は。
消化器疾患、循環器疾患の症例数が非常に多く、手術件数も増加傾向にあります。整形外科系の外傷の治療にも力を入れています。
救急では、隣接する兵庫県災害医療センターの高度救命救急センターのバックアップ機能も果たしています。二次救急を担うだけでなく、多発外傷などで高度救命救急センターの医師が足りない場合には、当院の医師を派遣しています。一緒に救急対応をしているというのは、大きな武器だと思っています。
救急車受け入れ台数はこの数年間で年間3000件前後。応需率は目標の90%に対して80%台後半です。310床のベッド稼動率も90%を目標としています。
季節的要素などの一時的な要因を除くと、救急受け入れの余地はまだあると思うので、もう少し増やしたいと考えています。
―今年9月初旬、台風21号が神戸を襲いました。
幸い、当院の建物や設備などへの損害はありませんでした。停電や断水もなかったので、入院患者さんにも通常通り対応することができました。
ただ、高潮の影響で、潮位があと1.5mから2m上がると敷地内に水が押し寄せるという状況にまでなりましたので、心配しました。高潮の際にも災害拠点病院としての機能を維持するため、防水対策について、BCP策定の中で再検討しているところです。
―被災地への医師や看護師派遣の状況は。
直近では、2018年7月、岡山県倉敷市真備町での豪雨を受け、医療チームが現地を訪問。心のケアにも携わりました。延べ2週間程度にわたる支援でした。
大規模災害が発生すれば、基本的には日赤本部が中心となり、国内の各赤十字病院への派遣要員を調整します。当院は、近畿支部の調整下で職員を派遣しました。1グループは医師1人と看護師数人、行動予定を調整するロジスティクス担当が1〜2人の計5人前後で構成されます。
被災地での経験は、自院に戻ってからの日々の診療にも生かされます。災害対応に興味のある職員も多いので、組織立てて若い人を育てたいと思います。
神戸赤十字病院
神戸市中央区脇浜海岸通1-3-1
TEL:078-231-6006(代表)
https://www.kobe.jrc.or.jp