"垣根は低く、志は高く" 便利で役立つ病院に
広報誌に載せる写真はお辞儀姿が定番。「開業の先生は地域の宝。"使い勝手のいい病院"として、お役に立つことが第一」と語る名物院長。地域医療連携とともに歩み、選ばれる病院づくりを進めてきた。
―病院の特長や強みを。
一つは「神戸医療センター」という名前そのものです。認知度が高く、付加価値もある。職員も誇りを持っていますし、研修医の募集などにも優位です。
次に新入院患者数。5年前、月平均452人にまで減ったのを、努力の積み重ねで徐々にプラスに。昨年度は月559人、今年は7月時点で月600人を超えました。理由は、近隣からの紹介が増えたことに尽きます。
そして、手術実施率の高さ。45%は全国に142ある国立病院機構病院の中で18位です。
難易度別の手術技術度Dが1886件で35位、さらに高度なEが67件で23位。「E」は、整形なら例えば小児側弯を3回に分けて矯正する手術。当院はこれが強みで、手術件数は全国2位です。がんの手術件数は胃がん29位、肝がん24位など。700床クラスが上位に名を連ねる中、健闘していると思います。
さらに、地域医療支援病院としての役割です。6年前の取得以前から力を入れ、現在、紹介率は72.2%、逆紹介率は78.5%で在宅復帰率は96%。地域医療連携室を始めたのは2005年ですが、翌年からは開業医の夜間診療に合わせ夜7時まで開けてきました。連携病院とは毎日、空き病床の情報を共有しています。
私は放射線科医です。CTやMRIの機器を地域の先生方に使ってもらえるよう連携を密にするうちに地域医療の担当となり、今に至った経緯があります。
院長になって最初の仕事は、玄関横の広い場所に地域医療連携室を移し、増員したこと。須磨区医師会の副会長も兼任していて地域の情報は早めに入りますし、携帯にも開業の先生方から頻繁にメールが来ます。「便利に使える病院」と思ってもらえれば本望です。
―課題だと思うところは。
一つは、全診療科の医師がいない点。精神科、神経科、胸部外科の常勤医がいない。胸部外科がないと肺がんが扱えません。そこで平日に非常勤で来てもらう体制にして手術に着手しました。3年前には気胸センターを立ち上げ、呼吸器センターも併設しました。
実際には300床規模で全科網羅するのは難しく、診療科を絞って小児科や産科などを閉める施設のほうが多い。当院は小児科6人、産婦人科5人の医師がいますが、採算面でメリットがあるわけではありません。でもなぜ続けるかというと、需要があるのはもちろんですが、若い医師を集めるためでもある。現に5年連続で初期研修医の充足率は100%で、本年度はフルマッチ。後期研修医も合わせ23人います。ちなみに医師数は計82人、国の充足率で300%です。
今後は、がん診療をさらに強化していきたいですね。消化器がんは一定の症例数がありますが、肺がん、婦人科がんがもう一歩。放射線治療機器を十分に活用するという意味でも、この二つの充実は欠かせないと考えています。
―今後の展望は。
収益面は昨年度から黒字に転換し、今年もおそらくプラス。実績を保ちつつ建て替えを進める予定です。選択肢の一つとして、最寄りの地下鉄「名谷」駅前への移転も検討しています。
この駅は同じ路線の駅の中で乗降者数が2番目に多く、神戸大学医学部保健学科も近い。医学科も沿線にあるので、両方との交流もしやすくなります。移転で住民がもっと便利に使え、さらに地域の人口増加に寄与できれば、こんなにうれしいことはありません。在任中に道筋だけでもつけられればと思っています。
独立行政法人国立病院機構 神戸医療センター
神戸市須磨区西落合3-1-1
TEL:078-791-0111(代表)
http://kobemc.go.jp/