伸びるロボット手術 高難度の治療を推進
ロボット支援下手術が日本で保険適用となったのは2012年。前立腺がんに認められた。昨年、手術支援ロボット「ダビンチ」が2台体制となるなど、診療体制の強化を進める和歌山県立医科大学泌尿器科学講座。よりスピード感のある進化を目指している。
―医局の特徴を。
1945年、「皮膚科学泌尿器科学教室」として発足しました。2代目の大川順正教授は、「日本尿路結石症学会」の前身である「日本尿路結石症研究会」を設立するなど、日本における尿路結石症研究の礎を築きました。
大川先生の功績を受け継いでいくために、当教室では現在でも尿路結石症に重点を置いています。さらに私の専門でもある悪性腫瘍を加えた2本柱として取り組みを進めています。
腹腔鏡下手術、ロボット支援下手術と、泌尿器科領域における術式の進化は目覚ましいものがあります。
2017年に「ダビンチS」を更新し、「ダビンチXi」と「Si」の2台体制となりました。西日本では広島大学に次いで2番目とのことです。
2018年9月時点のロボット支援下手術の実績は「ロボット支援前立腺摘除術(RARP)」約500例をはじめ、「ロボット支援腎部分切除術(RAPN)」65例、「ロボット支援膀胱全摘除術(RARC)」13例です。
スムーズに曲がり、回転するダビンチの関節機能によって、鉗子の自由度が高いのが利点です。また、鮮明で自然な奥行きを再現する3D映像のため、空間を把握しやすいというメリットもあります。
2016年にロボット支援下手術は腎がんも保険適用となりました。小径の腎がんに対する腎部分切除術は動脈を遮断して阻血下で行います。腎機能保護のためには阻血時間は30分以内であることが望ましく、この限られた時間内で腫瘍の切除、尿路の修復、止血を兼ねた腎実質の縫合を行う必要があります。こうした高難度手術においても、ダビンチは力を発揮します。
―泌尿器科の魅力とは。
患者さんの診断から手術、薬物療法といった治療の過程に、ほぼすべて関わることができる。それが魅力の一つだと思います。
また近年、女性の泌尿器科医が、特に若い年代になるほど増加傾向にあると感じています。このことは「魅力のある診療科」であることを示しているのではないでしょうか。
若い医師たちが泌尿器科に関心をもつきっかけの一つはロボット支援下手術ですが、薬剤療法が進化していることも特徴です。
「精巣腫瘍」は10万人に1人程度が発症し、主に20〜30代の男性に多く見られます。私が研修医だったころ、精巣腫瘍の転移といえば「予後がとても悪い」というのが一般的でした。
現在、すぐれた抗がん剤や放射線治療の登場により、転移があっても根治が期待できます。実際、およそ7割の患者さんが克服しています。「患者さんを治す」。医師としてのやりがいを感じる場面が、とても多いことも泌尿器科の魅力ではないかと思います。
―若い医師に求めるのは。
私は大学を卒業してから米国に渡り、長く基礎研究に携わりました。臨床の本格的なスタートは35歳のころです。
周囲よりもスタートが遅いと感じることはありませんでした。基礎研究の中で培った知識や視点は、臨床の場で非常に役立っていると実感してきました。
日々、日常診療の忙しさに任せて過ごすのはもったいないと思います。実践的な資格の取得なども大切ですし、同時に臨床の中で「リサーチクエスチョン」を見つけ、答えを探すことも重要です。リサーチマインドをもった人材を育成したいと思います。希望すれば、国内外の留学も全力でバックアップします。和歌山県で唯一の大学病院、教育機関としての責務を果たしていきます。
和歌山県立医科大学 泌尿器科学講座
和歌山市紀三井寺811-1
TEL:073-447-2300(代表)
https://www.wakayama-med.ac.jp/med/urourodir/