共通の目標を掲げて教室員たちと一歩ずつ
長崎大学の皮膚科は全国でも屈指の医局だ。希少疾患や難病、感染症などを専門にしている。5月には室田浩之教授が就任。今までの取り組みや今後の意気込みを語ってもらった。
―教授に就任して4カ月余り。抱負を。
私は学生時にラグビーをしていました。ラグビーのチームは教室と似ていると思っています。それはなぜか。全員が相互扶助とコミュニケーションを通して、チームを前進へと導くのです。俯瞰(ふかん)して軌道修正をする司令塔が必要だという意味でも似ています。教室でのその役割は私。教室員とともに「一歩でも前へ」の気持ちで歩み続けたいと思っています。
私たちが掲げる共通ミッションは、「治療が難しい病気も根本から解決して、患者さんにしっかりとフィードバックする」ことです。疑問から自分のテーマを見つけて、解決し、患者や社会に還元できるような医師になってほしい。ベッドサイドでの疑問をベンチに持ち帰り、研究、検証を経て、またベッドサイドに提供する。その繰り返しができる医師を育てていきたいと思います。
また、人材の確保にも努めたい。「入りたい」と思ってもらえる教室にするためには、どんな雰囲気のところで何を目指してどんな取り組みをしているのかが、外から見えないといけません。
この教室は、各スタッフが自分の得意分野をしっかりと持ち、力を発揮しています。それが、結果的に他のスタッフの弱点を補完することにつながっている。診療面だけでなくあらゆる部分で「助け合う」雰囲気が根付き、働きやすさにもつながっていると感じています。その特徴をしっかりと打ち出していきたいですね。
ただ、就任からまだ4カ月余り。医局外にまで周知するのには時間が必要です。今年は地道に種を蒔き、来年には花を咲かせたいですね。
―長崎大学皮膚科の特徴は。
皮膚悪性腫瘍診療の県下中心拠点です。また、難病の一つ「弾性線維性仮性黄色種(PXE)」の診断・治療など全国から難治・希少疾患の患者さんが集まります。
病院では皮膚科・アレルギー科を掲げてアレルギーの専門外来を設置していることもあり、アレルギーの原因がわからない患者さんも来ます。アレルギーは衣食住など生活に密接に関わります。原因不明の症例についても症状を軽減できるよう努めています。
皮膚の感染症の研究にも積極的です。長崎は農業や漁業がさかんな地。土壌や水から皮膚を介して感染する症例があります。地域の特性上、力を入れている分野です。
私の就任と同時に「発汗外来」を開設しました。もともと私の専門分野の一つが「汗」なのです。
全国的に汗にスポットを当てた医療を提供する施設は限られている。汗が多い多汗症、汗が出ない無汗症など、汗に悩んでいる人はどこの診療科に行けばいいのかわからないというのが現状です。
当科では、発汗機能検査を実施します。汗の量を測定し、発汗している部位としていない部位を調べ、原因を調査します。
―地域連携については。
地域のクリニックや病院の先生方と直接お会いする機会を設け、もっとディスカッションをしていきたいと思っています。
われわれが主催する研究会を増やし、地域の課題などを討論する。顔と顔の見える関係、紹介先に迷った時などに気軽に相談できる関係を築いていきたいと考えています。
皮膚科腫瘍、救急などさまざまなケースでスムーズに連携するため、今、県内の病院の皮膚科診療における特色を紹介する冊子を企画しています。使命感を持って作り上げたいですね。
長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科 皮膚病態学分野
長崎市坂本1-7-1
TEL:095-819-7200(代表)
http://www.med.nagasaki-u.ac.jp/dermtlgy/