【11月岐阜県】第60回 日本先天代謝異常学会総会 / 第16回アジア先天代謝異常症シンポジウム
先天代謝異常症をもっと語ろう
11月8日(木)から10日(土)までの3日間にわたり、岐阜市で「第60回日本先天代謝異常学会総会」および「第16回アジア先天代謝異常症シンポジウム」が開催される。会長を務める岐阜大学小児病態学講座の深尾敏幸教授に見どころを聞いた。
活発な議論を期待
先天代謝異常症は、生まれつき酵素が体内でつくられなかったり、正常に働かなかったりすることで代謝機能に影響を及ぼし、さまざまな疾患を引き起こすことを言います。
岐阜大学の小児病態学講座は、国内の先天代謝異常症分野の第一人者・折居忠夫名誉教授をはじめ、世界的にも注目される臨床、研究を重ねてきた歴史があります。
私自身、その伝統をしっかりと受け継ぐことのできる講座づくりに努める中、今回の「第60回日本先天代謝異常学会総会」という節目に会長を任されることになり、とても喜びを感じています。
20年ほど前、先天代謝異常症は「診断はできるが治療法が少ない」というのが共通の認識でした。近年、希少疾患に対する治療薬の開発、臨床での応用が世界的に進み、治療の選択肢が広がりました。そうした動きを背景に、大いに議論が盛り上がる3日間になることを期待しています。
国内外の交流を後押し
「第16回アジア先天代謝異常症シンポジウム」が同時開催ということもあり、海外から多数の発表者が来日します。160の一般演題のうち、4分の1が海外の方の発表。アメリカ、中国、韓国、タイ、ベトナムなど国籍も多様です。
私も海外の学会で経験しましたが、興味深い発表が行われているのに、残念ながら言語を十分に理解できなかったことがあります。
今回、開催テーマを「先天代謝異常症をもっと語ろう」としました。メイン会場での発表は、すべて日本語と英語の同時通訳でお届けします。言葉の壁を取り払うことで、国内外の参加者の対話、交流が活発化してほしいと願っています。
例えば特別講演は、岐阜大学名誉教授の木曽真先生に「糖鎖」をテーマに講演をお願いしました。
糖鎖構造の異常は、先天代謝異常症の発症と関連しています。糖鎖研究の第一人者である木曽先生のお話は、日本の優れた研究を海外の方に知っていただく良い機会になると思います。
先天代謝異常症の治療のアプローチが多様化するとともに、早期発見、早期治療の実施によって、高い効果が得られることが分かってきました。早期発見を推進するために重要なのは、やはりファーストタッチの役割である開業医の先生方の知識です。
先天代謝異常症の最新の情報を共有するために、国立成育医療研究センター総合診療部の窪田満部長、帝京平成大学の高柳正樹教授による教育講演を企画しました。
開業医の先生方に先天代謝異常症への理解を深めていただき、また患者の状態に応じて専門の医師と連携する体制をつくる。そんなきっかけになればと思っています。
「一生」に寄り添う医療を
臨床がいかに重要かということを、いつも当講座のスタッフに伝えています。
小児の場合、採血などの簡単な検査であっても、成人と同じようにはうまくいかないことが実に多いのです。また、小児科医は特定の専門分野を掘り下げていく以前に、土台としてあらゆる領域の知識を備えておかねばなりません。
だからこそ、知識や技術を体で習得できる臨床が大事なのです。充実した臨床の上に、研究や教育があるのだと考えています。
先天代謝異常症の治療は、患者と「一生付き合う」ことになるケースも多い。ある1人の人間の人生にずっと寄り添っていくわけですから、医師として大きなやりがいを感じられる領域だと思います。
Program
会長講演
「スプライシング異常に魅せられて」
演者:深尾 敏幸(岐阜大学大学院医学系研究科小児病態学教授)
特別講演1
「Correction of mitochond rial fatty acidoxidation or respiratory chain defects by drugs or naturalcompounds」
特別講演2
「A review on congenital disorders of glycosylation and its therapies」
演者:Eva Morava(Mayo Clinic, Department of Clinical Genomics)
特別講演3
「糖鎖の構造と生命機能─ヘパリン、シアロ糖鎖、糖脂質ガングリオシドを中心に─」演者:木曽 真(岐阜大学名誉教授)
会期
11月8日(木)~10日(土)
会場
じゅうろくプラザ
運営事務局
株式会社インターグループ
TEL:06-6372-3053