【11月兵庫県】第72回国立病院総合医学会
多様性のなかに個が輝く ―私たちの医療を推進します―
11月9日(金)・10日(土)、第72回国立病院総合医学会が開かれる。テーマに掲げたのは「多様性のなかに個が輝く」。そこに込められた意図は。
患者に合わせた治療の必要性
国立病院総合医学会は、全国にある国立病院機構の職員が一堂に会して意見交換し勉強する年に一度の学会です。講演のほかにも、さまざまなシンポジウムを開いており、一般の方にも開放しています。医師だけでなく、全職種の職員が集まり、交流できる貴重な機会です。
第72回を迎える今年のテーマは、「多様性のなかに個が輝く―私たちの医療を推進します―」。設定の背景には、多様性が注目され一人ひとりの個性が大切になっている今、医療は曲がり角にあるという問題意識があります。
昔は、いわゆる「権威ある先生」の経験が治療の方向性を決めていました。その後、1980年代にはエビデンスに基づいた医学(エビデンス・ベースド・メディスン、EBM)が導入され、統計学的に証明された治療の導入が進みます。
平均的な患者さんをモデルとした標準的医療という国の方針に基づいて、ガイドラインに沿った治療を行ってきました。ところが、同じ疾患でも患者さんによって状態が違う場合や、標準治療では対応できないケースが増えてきたのです。
ゲノム解析で、個々の遺伝子の変異に違いがあることが解明されつつあります。今は患者さんの"個性"を見極めて、ふさわしい治療法を追究していく、まさに転換点。そんな時代の学会という位置づけです。
女性のヘルスケア推進を掲げて
今回の大会では、女性を主題とした基調講演やシンポジウムを増やしました。社会進出が進み、ライフスタイルが大きく変わる中で、ストレスが原因とみられる子宮内膜症の患者さんが増えています。
若いころに定期健診を受けてこなかった、または体に異変があっても我慢してきた結果、診察を受けたときには重症化しているというケースを産婦人科医として数多く見てきました。
若い女性の疾患を予防することこそが重要です。そこで今回は、私が「女性ヘルスケア向上は喫緊(きっきん)の課題」と題した基調講演を行うほか、ランチョンセミナーでは「婦人科領域における個別化医療への一歩」「子宮腺筋症の治療指針」「乳がんの多様性」といったテーマで講演や議論をしてもらう予定です。
セーフティーネット機能もアピール
それぞれ5人が登壇するシンポジウムでは「救急医療の推進とキャリア形成」「高齢者医療と在宅ケアのこれから」「がんゲノム医療の新たな展開」「セーフティネットの障害児支援」などのテーマを用意しました。
重症心身障害児者のケアなど、国立病院機構内には社会的なセーフティーネットの機能を持つ病院が数多くあります。私はこれまで患者さんの個性に合わせて細やかに対応する多くの職員の方々に出会ってきました。その良さをアピールする学会にしたいと考えています。
今学会の準備は京都医療センターと南京都病院が進めています。そこで、京都大学の中川尚史教授と華道家元池坊の池坊専好・次期家元にお越しいただき、特別講演を行います。
中川教授にはサルの行動研究を基にした人類の起源と進化を、池坊次期家元には、花に見る多様性、1本1本の生きた花を表現する華道の立場からお話しいただく予定です。
昨年香川県で開催した第71回の出席者は6000人以上。今年も多くの人の参加を期待しています。
Program
特別講演
11月9日(金)10:00~11:00
「サルの行動から人類の起源と進化を語る」
演者:中川 尚史(京都大学大学院理学研究科生物科学専攻教授)
11月10日(土)11:00~12:00「いのちをいかす いけばなの美と心」
演者:池坊 専好(華道家元池坊次期家元)
招請講演
11月10日(土)10:00~11:00
「いよいよ始まるがんゲノム医療」
演者:間野 博行(国立がん研究センター研究所所長)
11月9日(金)12:00~12:30
「地域医療構想と地域包括ケア~行政へのアプローチの秘訣とともに~」
演者:山本 光昭(兵庫県健康福祉部部長)
会期
11月9日(金)・10日(土)
会場
神戸国際会議場、神戸国際展示場(神戸市中央区港島中町6-9-1)
運営準備室
日本コンベンションサービス関西支社
TEL:06-6221-5933