【11月福岡県】第13回日本腹腔鏡下ヘルニア手術手技研究集会
ラパヘルを維新する!!
11月17日に「第13回日本腹腔鏡下ヘルニア手術手技研究集会」が開催される。今年のテーマは「ラパヘルを維新する!!」。誰もが発症する可能性がある「鼠径ヘルニア」にフォーカスした学会だ。どのような発表があるのか、集会の当番世話人である能城浩和教授に話を聞いた。
手術中の動画を視聴、意見交換する「研究集会」
「日本腹腔鏡下ヘルニア手術手技研究集会」は7年前にスタートしました。この研究集会がほかの学会と大きく違うのは発表方法です。
学会が研究の成果を広く伝える場であるのに対して、当研究集会は腹腔鏡手術の技術向上を目指しています。そのため、講演はスライドを用いるプレゼンテーション方式の発表ではなく、各医師の手術中の動画を視聴するのです。
実際の手術には1時間前後かかるため、「腹膜剥離」や「メッシュ挿入」などの場面ごとに分けて、20分以内にまとめて発表してもらいます。約8分のノーカット映像を途中で止めながら、座長からコメントや指摘を受けています。
体外からの切開と腹腔鏡下、再発率が違う理由は
今回のテーマは「ラパヘルを維新する!!」。「ラパヘル」とはヘルニアの中でも股の付け根あたりから腸などの臓器が出てきてしまう鼠径ヘルニアの内視鏡手術のことです。
手術の方法には、体外に飛び出して膨らんだ部分を切開して外部から治療する「鼠径部切開法」と、腹腔鏡下手術である「ラパヘル」の2種類があります。
鼠径ヘルニアを発症すると内臓が筋肉の隙間をぬって出てくるため、外部から押し戻しても腸が通ってきた穴が残され、それが再発につながります。ラパヘルは内部から直接トンネルの入り口を見つけてメッシュでふさぐので、理論上では再発のリスクが低い術式です。
世界的に「鼠径部切開法」によるヘルニアの再発率は1%~2%、ラパヘルは3%と言われています。しかし佐賀大学医学部附属病院では腹腔鏡を用いた場合の再発率は0.5%だと報告されています。
なぜ、世界的に見るとラパヘルの再発率が上がってしまうのか。内視鏡を使ったり、全身麻酔が必要だったりと要求される技術レベルが高い。その手技を学ぶことができずにいる医師が多いことが再発率を高める原因だと考えました。
ベテランの技を見たり、手術時のポイントを教えてもらったりすることで、再発のリスクを減らすことができると思います。
研究集会ではベテランと若手の医師を2:1の割合で呼んで発表してもらうプログラムを組んでいます。ベテランにも若手にも、自分の手術の方法を見直すチャンスにしてもらえればと考えています。
日本での鼠径ヘルニアの手術件数はおよそ年間8万件です。加齢による筋力の低下や生活習慣病で内臓脂肪が溜まり臓器自体が重くなっていることが原因で、今後さらに増えると予測されています。
そのうち4万件が腹腔鏡で治療されています。腹腔鏡手術後に穴を空けた腹膜から内臓が出てしまう「腹壁瘢痕ヘルニア」を発症することもあります。腸が戻らなくなると、感染症にかかったり、腸が壊死してしまったりする。3~4cmの穴でも出てきてしまうので注意が必要です。研究集会ではこのヘルニアについても講演があります。
再発や感染症のリスクを最小限にするヒントがある
これまでは、腹腔鏡とメスを使う手術の両方を学んできた医師が数多くいました。私もその一人です。しかし今、手術はより患者への負担が少ない方法にシフトしつつあります。腹腔鏡での手術の経験を専門とする医師も増えてくるでしょう。
今回の研究集会では、さまざまな病院で行われている手術を見ることができます。腹膜の切り方、メッシュの貼り方一つで再発のリスク、感染症のリスクを最小限にできます。研究集会に参加することで、これまで気付かなかった発見があるはずです。
Program
オープニングセミナー
「日本におけるラパヘルの歴史ー過去・現在・未来ー」
座長:和田 則仁(慶應義塾大学医学部一般・消化器外科)
演者:早川 哲史(刈谷豊田総合病院 腹腔鏡ヘルニアセンター)
ランチョンセミナー
「腹腔鏡下腹壁ヘルニア手術をエビデンスから考える」
座長・特別発言:能城 浩和(佐賀大学医学部一般・消化器外科)
演者:和田 英俊(市立島田市民病院外科)
ティータイムセミナー
「膨潤TAPPで変わらない安定を」
座長:江口 徹(原三信病院外科)
演者:松村 勝(戸畑共立病院外科)
会期
11月17日(土)
会場
都久志会館(福岡市中央区天神4-8-10)
運営事務局
インターグループ九州支社
TEL:092-712-9530