"超職種"の力を備え "多職種"を機能させたい
2014年に始まった愛知県精神医療センターの全面リニューアルプロジェクトは、今夏、ついに完了を迎えた。「新病院をしっかりと機能させていくことに力を注ぎたい」。粉川進院長は決意を新たにする。
―目指す病院像は。
地域の方に当院のことをもっと知っていただき、気軽に訪れてもらえる。そんな開かれた病院でありたいですね。精神科医療に対する偏見はずいぶん減りましたが、完全に払しょくできたわけではありません。
患者さんと触れ合う機会をつくることで、特殊な病院ではないことを実感してほしい。年に何度かコンサートを企画したり、夏祭りを開催したりしているのもその一環です。
広々とした芝生の広場も整備しました。遊歩道に沿って桜の木が並んでいますので、お花見を楽しんでもらえたらいいですね。
個室や保護室などを充実させたほか、病棟の機能分化を図りました。旧病院は主に精神科一般病棟で運用していましたが、新病院では「救急病棟」「急性期病棟」「児童青年期病棟」「医療観察法病棟」などを開設。当院の273床のうち約半数に専門的な機能をもたせています。
従来から取り組んでいた訪問看護に加えて、重度の精神疾患患者が地域でその人らしく生活していけるよう「ACT(包括型地域生活支援プログラム)」を開始。
また、外来スペースのメイン部分に窓口を設置し、地域支援を強化しました。
専門外来についても「児童青年期専門外来」「物忘れ外来」「成人発達専門外来」に分けました。また児童青年期、成人期など、デイケアは大きく三つのコースがあります。
つまり、より早期の退院や症状の改善を目指した体制を整備したのです。長期入院患者を1人でも減らし地域に帰っていただく。そして、地域で支えていく。そのための体制をしっかりと整えるには、病院の建て替えは不可欠でした。
―診療面で重視しているのはどのような点ですか。
当院の伝統として患者さんから入った連絡は、できるだけ担当医師や看護師が直接応対することにしています。"仕事が決まった"と喜ぶ報告もあれば、外来の予約日時を変更したいという希望もある。あまり一般的ではないかもしれませんが、私はいいシステムだと思います。
例えば空いているからと予約を入れたところ、時間がずれ込んで、他の患者さんの診療にも影響してしまうことがあります。
担当医師による「この患者さんは長めの診療時間を予定しておいたほうがいい」といった判断があれば結果的に合理的で、患者サービスの向上につながる。「電話がたくさんかかってきて大変ではないか」と思われがちですが、そんなことはありませんよ。
―組織づくりについて。
ケースワーカーが4人から12人に、臨床心理士が1人から8人に、作業療法士は3人から7人に増え、看護師の配置も手厚くしています。病院の建て替えを機に、マンパワーを充実させることができました。
たしかに職員の数は増えましたが、入院期間の短縮化が促進され、入院後すぐに退院を見すえたケースワーカーの仕事が始まる。医療が複雑化、多様化していく中で、一人一人が果たすべき責任はますます重くなっていると言えます。
さまざまな専門職が支え合って医療を提供する「多職種」の協働が精神科医療の基本です。私としては自身以外の職種の役割も一定程度カバーできる「超職種」の力をもった上で、多職種連携を成り立たせることができれば望ましいと考えています。
ACTのチームでは、訪問したケースワーカーが看護をしたり、薬に関する相談に乗ったりします。職員の機能分化と「超職種」のバランスは今後の一つのテーマだと思います。
愛知県精神医療センター
名古屋市千種区徳川山町4-1-7
TEL:052-763-1511(代表)
http://www.pref.aichi.jp/seishiniryo-center/