患者さん、社会に信頼される病院へ課題の"見える化"目指す
「社会のニーズを先取りし、柔軟に変化できる組織に」と語る平家俊男病院長。この4月、尼崎総合医療センターのトップに就任。3年前に2病院が統合してできた、まだ新しい病院で、小児を含めた高度急性期医療と救急に力を入れる。
―就任から半年が過ぎました。目標とすることは。
前病院長は、ER型高度救急医療の実績を着実に積み重ねてこられました。救急医療に関して、地域から非常に高い評価を受けているという実感があります。
そのほかの機能についても地域から信頼されるよう、充実を図っていきたい。前病院長が掲げた「量から質へ」「病院完結型から本格的地域完結型医療へ」「医療のみならず、マネジメント・サービスでもトップの病院!」の三つの目標に向けて、歩んでいきたいと思っています。
―具体的に取り組み始めたことを聞かせてください。
私が今の時点で特に強調したいのは、サービス力・マネジメント力の向上です。730床、職員数2000人を超えると、トップのガバナンスだけでなく、各部門や現場の一人ひとりのサービス力、マネジメント力をいかに醸成していくかが大きな課題になります。
病院全体が非常に複雑で、私が逐一、指示できる状況ではありません。だからといって各部門が、思い思い勝手に動き出してしまっては、進みたい方向に行けなくなってしまうでしょう。
各部門が自主的にマネジメント力・患者さんに対するサービス力を熟成していく。けれども、方向性は一致している。そんな組織になれるよう、仕組みを考えていきたいと思います。
着任後、管理局長や診療科の医師、事務職員らと病院の課題をオープンにして解決法を議論する「トップマネジメント会議」を開いています。同時に職員の要望を受け付ける窓口もつくり、トップマネジメント会議へとつなぐ仕組みも整えました。
職員が考えていることや要望を病院の施策に反映できるよう、手順の明確化、見える化を一層進めていきたい。同時に職員には、問題点を指摘して議論していくときには、病院全体のことも頭の中に入れて、解決策を出してもらうようお願いしています。
この病院は統合して、まだ3年です。人の一生に例えると、ヨチヨチ歩きを過ぎたぐらいだと考えています。これから学生生活を経て、社会人となったときに、しっかりと力を発揮できる病院になれるのか。そういった少し長期的な視点を併せ持って、日々、運営しています。
まだまだ各所にある課題は、改善のための宝です。ボトムアップでどういう病院の機能が整備されていくのか、私自身も楽しみにしているところです。
―今後に向けて。
小児周産期医療と救急は、採算面で民間が担うのは難しい部分がある。ドクターカー、NICU、救命救急センター、小児救命救急センターを擁し、自治体病院として、その部分を任せていただけることを、強みの一つだと思っています。
同時に、高度専門医療も私たちの病院の特徴です。血液、脳神経、がん...。さまざまな分野で外部との協力関係を築き、エビデンスのある治療をやっていくことが必要ですし、数多くのデータを集めることにも、病院全体として取り組んでいきます。
そのほか、医師、看護師を含めた医療者の教育、研修、高齢者に対する地域完結型医療体制の整備推進など、当院に求められていることはまだまだあります。
高い理想を掲げながらも、足元も固めなければならない。組織の熟度を高めていく中で、より患者さんにとって受診したい病院、従業員にとって働きたい職場、ブランディングをどう高めていくか。地域の医療機関とどう連携していくか。じっくりと腰をすえて向き合っていきたいと思います。
兵庫県立尼崎総合医療センター
兵庫県尼崎市東難波町2-17-77
TEL:06-6480-7000(代表)
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