150年目のその先へ エンジンは回り続ける
創立150周年を来年に控え、今年2月、病院トップに就任。その肩書をさらりとまとい、フレンドリーな笑顔と語りで場を和ませる平田健一病院長。節目の年に向けた展望を聞いた。
―就任して半年です。
国立大学の経営は厳しい。病院も経営が求められる一方、教育や研究には一層の費用がかかります。文部科学省の予算は減っていますし、どこも大変でしょう。
とはいえ、希望はあります。患者中心の医療の実践、人間性豊かな医療人の育成、先進医療の開発と推進、地域医療連携の強化、災害救急医療の拠点活動、医療を通じての国際貢献。この六つが変わらぬ当院の基本理念です。引き続き、追求していくつもりです。
昨年は神戸開港150年で、今年は県政150年。この街とともに歩んできた大学病院も、来年創立150周年を迎えます。
神戸は昔からいろいろな人や文化を受け入れてきた土地柄。大学や病院にもそんな気風は受け継がれています。この自由闊達(かったつ)な雰囲気が、新しいムーブメントを生む土壌にもなっているのでしょう。
―この先の医療に関するトピックは。
最先端の医療を安全に提供することは大きな使命。心身に負担をかけない低侵襲な治療をさらに進めます。次代を担う医療機器の開発にも力を入れています。
その拠点の一つとして昨春、医療産業都市であるポートアイランドに開設したのが、「国際がん医療・研究センター(ICCRC)」です。
がんの先進的な外科治療を行うのはもちろん、神戸大学工学研究科との医工連携、さらに周辺の医療・バイオ関連企業や神戸医療産業都市に集積する高度専門病院群「メディカルクラスター」内の医療機関とも手を組んで革新的な医療機器の開発を目指します。
外科を中心にダビンチに代わる国産ロボットの開発も進めていますので、完成したら導入したいですね。
昨年は外国人患者の受け入れ支援などの国際医療全般を担うため、大学病院内に「インターナショナル・メディカル・コミュニケーションセンター(IMCC)」も設立しました。
今年5月には、外国人患者のための窓口をICCRCにも設置。海外からの患者の受付や情報の事前取得、ビザの手配などを支援します。大学病院だけでなく、メディカルクラスター内の医療機関への受け入れ支援も行います。国際化も責務の一つです。
さらに、医療安全も担保しながら革新的な研究を進めるため、兵庫県初の「臨床研究中核病院」を目指します。承認条件は厳しいですがなんとかめどをつけ、来年度には申請予定。取得後は、企業治験も含めさらに国際水準の臨床研究を進めます。
―兵庫県唯一の国立大学病院としてできる地域貢献は。
最先端の医療を提供する以外にも、希少疾患や難病も含めた幅広い病気に対し、最後の砦(とりで)としての役割を果たします。
教育も重要です。兵庫県も医師が充足しているとは言えません。専門医制度などで都会へと人材が集中する中、難しい面はありますが、とにかく医師を増やすことが急務です。兵庫県と連携して「地域医療活性化センター」を運営し、地域医療を担う人材を育成しています。
県からの奨学金で卒前から卒後まで一貫教育を受けた養成医は、卒後9年間、県内津々浦々の病院を回ります。
神戸大学は10人、他大学も含めると約20人が毎年卒業しており、貴重な人材となっています。教育やキャリアパス支援なども丁寧に行っています。
150周年記念事業として、「未来医療開発研究センター」の設立も計画しています。再生医療などをテーマに、研究が活性化することで地域の発展も後押ししたい。知恵を絞って実現したいですね。
神戸大学医学部附属病院
神戸市中央区楠町7-5-2
TEL:078-382-5111(代表)
http://www.hosp.kobe-u.ac.jp/