低侵襲の頸椎手術"K-Method"でもっと笑顔を
「ほんの3cm切る手術で、胸や腕、手のしびれがほぼなくなった。先生には感謝しかない」と、病院周辺を散歩していた入院患者。すがる思いで遠方から訪れる者も多い。かつてない頸椎手術を開発し、成果を上げているドクターの思いは。
―「K-Method」開発のきっかけと特長を。
脊椎の手術は傷が大きく、成功しても筋肉をバッサリ切ることで痛みやコリを併発する患者さんが多くいました。見た目の問題もあります。もっと小さな傷で痛みの少ない手術はできないか―。単純にそう思ったのが出発点ですね。
「K-Method」は首の後ろを3cmほど切開して脊髄を圧迫している骨に人工骨「Kスペーサー」を挿入拡大し、正常な形に整える術式。手術時の視野やワーキングスぺースが狭いので技術が必要ですが、かなり低侵襲にできる。術後、人工骨は自然に骨と一体化します。
考案したのは、アメリカ留学時です。動物実験などを繰り返しながら手術法とともに「Kスペーサー」を開発し、特許を取りました。
人工骨は精度と耐久性が必須。ひずみやずれに強い特殊な構造を考えるのに参考にしたのが城の石垣です。知人の設計士と研究して形状を突き詰め、力学的な問題をクリア。そのあたりの証明が難しく、一番苦労した点です。特許取得は出願から7年ほどかかりました。
「K-Method」を始めて約20年。7000人以上に施術しました。前かがみの首の角度を整える形状の人工骨も開発するなど、改良を重ねています。手術器具もオリジナルのものです。
―対象となる疾患は。
頸椎症全般です。変形性の頸椎症、頸部の脊柱管狭窄症、頸椎の椎間板ヘルニアなど一般的なものから、後縦靭帯骨化症などの難病まで。神経の通り道が狭くなることで痛みやしびれ、動作できないなどの障害が出る病気に広く適用します。
開業して6年目。最初の10カ月で47の都道府県すべてから患者さんがお見えになりました。それだけ変性疾患は多いのに手術されずにいるということ。首はリスクが高いため「様子をみましょう」と言われ続け、生活に支障が出て苦しんでいる方が多いのです。
重症の方はなるべく早めに入院できるよう調整しています。1年前には和歌山県立医大で脊椎班のチーフだった医師が着任し、3人体制に。1日3件ずつ、手術しています。
「K-Method」以外にも圧迫骨折のセメント治療や腰のヘルニア手術のほか、日帰りの要望に応えてレーザー手術も始めました。低侵襲な手術の選択肢を広げ、より幅広いニーズに応えられる治療を展開したいと思っています。
―これからの夢は。
この病院を開院したのも、後継者を育てたいという思いから。患者さんが地元で治療を受けられるよう、各都市に病院をつくりたい。それが夢ですね。
実は「K-Method」は技術が必要な割には"儲からない"。人工骨は安価ですし、抗生物質もほぼ使わない。手術翌日から歩けるほどで、経営面で有利とは言えないでしょう。
しかし社会的には、低侵襲で医療費のかからない手術は今後ますます必要とされてくる。何より、患者さんのためになる手術です。志のある人に、この思いと技術を伝えていきたい。
腕自慢を求めているのではありません。手術を安全に行うための機械を発展させていますし、フォロー体制も整えます。多くの症例に触れて経験を積めば、この医療分野のトップを目指せるでしょう。
私が20年も続けてこられたのは、患者さんの笑顔があってこそ。「ありがとう」と喜ぶ姿を見ると幸せな気分になりますし、明日からまたがんばろうと思える。プラスのエネルギーを授かっているんです。
医療法人社団親和会 京都木原病院
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