腰の痛みに悩む人々の最後の砦でありたい
厚生労働省の調査によると、国民の自覚症状として男性で1位、女性で2位の座にあるのが「腰痛」。脊椎の低侵襲手術で豊富な実績をもつ「あいちせぼね病院」には、国内外の患者が集まる。伊藤全哉院長は「痛みに苦しむ患者の最後の砦(とりで)を目指す」と言う。
―昨年4月に開院。
1997年、私の父である伊藤不二夫理事長が脊椎(せきつい)の低侵襲手術を専門とする「伊藤整形・内科あいち腰痛オペクリニック」を開設しました。
経皮的内視鏡下腰椎椎間板摘出術(PELD)などを積極的に推進し、国内でもトップクラスの実績を維持してきました。しかし、高度な技術や特殊な器械を用いるクリニックの低侵襲手術は、多くが自費診療です。誰もが気軽に受けられる治療というわけではありません。
そこで、当院の技術をより多くの人に届け、患者さんの選択肢を広げたいという思いのもと、保険診療を主体とする当院をオープンしました。
開院後、全医会グループ全体の年間手術件数は、前年比でおよそ1・5倍となる2000件ほどに増加しました。近年は中国やインドネシアなど、海外からお越しになる患者さんも増えています。
当院を受診する患者さんのほとんどが、これまでに「何らかの治療を医療機関で受けたことがある」とおっしゃいます。それでもなかなか改善せず、ずっと痛みを抱えながら、我慢し続ける毎日を送っているというのです。
患者さんとお話ししていると、私たちが「最後の砦」にならなければという強い気持ちが湧きます。痛みを解消できるまでは、家に帰すわけにはいかない。それほどの覚悟で治療に取り組んでいるつもりです。
―疾患の傾向は。
「腰椎椎間板ヘルニア」や「脊柱管狭窄(きょうさく)症」が中心です。
背骨の間でクッションの役割を果たしている椎間板の一部が出っ張り、神経を圧迫することで痛みやしびれを生じさせる状態が腰椎椎間板ヘルニアです。
当院が実施しているPELDは、うつ伏せになった腰椎椎間板ヘルニアの患者さんの背中を6mm程度切開して内視鏡を挿入。その中に入れた3mmの小鉗子によって、ヘルニアを摘出する術式です。
手術の所要時間は平均30分から1時間ほど。術後数時間で動くことができ、日帰り手術も可能です。
従来のように大きく切開して筋や骨を切る必要がなく、局所麻酔のため患者さんと会話しながら進めることもできます。
神経に触れる手術の場合は術後に麻痺が残ってしまうことがあります。局所麻酔なら、患者さん自身が「痛みを感じているかどうか」を伝えることができますので安全性が高まります。
―大切にしていることは。
PELDをはじめとする低侵襲手術は海外が先行しており、まだ国内で導入している施設は多くはないのが現状です。極めて高度な技術が求められること、そして高価な機器をそろえる必要があることなどが主な理由です。
2007年から2017年までの11年間で、全医会グループは脊椎に対する手術を約1万3000件実施しました。医師は年に4〜5回ほど海外の学会に参加するなど、常に新しい技術を取り入れ、質の向上を図っています。また、放射線技師や理学療法士も学会発表や論文作成に意欲的です。
当院のモットーの一つは「医学の発展への寄与」です。情報を受け取るだけでなく、自分で新たな医学情報を発信することを重視しています。
当院でこれまでにPELDを受けた患者さんの最高齢は96歳。いまや「高齢だから痛いのは当たり前」ではなく、諦める必要などありません。つらい痛みを伴う毎日をなんとかしたい。そんな患者さんの願いに、これからも応え続けていきたいと思います。
医療法人全医会 あいちせぼね病院
愛知県犬山市五郎丸上池31-1
TEL:0568-20-9100(代表)
https://www.itoortho.jp/