私たちは"人間力"で勝負する
独自のアプローチに基づく認知症治療や「人間学」を掘り下げていく萩原秀男理事長による勉強会など、ユニークな取り組みを打ち出してきた医療法人社団秀慈会。進みつつある地域医療構想の中で描く、今後の展望を聞いた。
―法人の概要を。
1991年に「萩原医院」を開院し、1994年に「医療法人社団秀慈会」を設立しました。
以降、介護老人保健施設「萩の里」をはじめ、居宅介護支援事業所や訪問看護ステーションを開設。介護に軸足を置いて法人の幅を広げてきました。
介護支援に注力する中で肺炎などを発症して医療的なケアを要する人にも法人内で対応していけるよう、2003年に「白萩病院」を開院。2006年には障害福祉サービス事業所「ダンケ」を開所しました。変わりゆく環境に適応していくために、時代に応じた「肉付け」を施すことで発展を遂げてきたのです。
現在は「地域包括ケアシステムの中核を担うことができる病院・介護施設」となるべく、「医療、介護・福祉、住まい、環境」の複合的な視点から地域への貢献を目指しています。
―具体的な取り組みを教えてください。
自治体が策定した地域医療構想のもと各医療機関が病床再編を進めています。特に慢性期病院は、地域の方に喜ばれ、他の施設にない特色を持たなければ地域での存続は難しくなっていくでしょう。そこで私たちが考えたのは、認知症治療で独自色を強めていくということでした。
介護老人保健施設「萩の里」では、BPSD(行動・心理症状)を伴う認知症患者さんたちも積極的に受け入れています。服用している薬の影響と認知症の症状を適切に整理し、過鎮静を引き起こさない最小限の薬物量を処方。周辺症状をしっかりと落ち着かせることで、ご家族の負担軽減を図っています。
「認知症とはこういうもの」「こんな症状がありうる」などとあらかじめ理解できていれば、介護する側に余裕が生まれ、ストレスの大幅な緩和につながるのではないか―。
そんな考えに至った私は2012年、職員向けの認知症に関する勉強会を始めました。白萩病院で週に1度、萩の里で週に2度、開いています。
私自身、もともとは心臓血管外科が専門ですから、認知症のことを地道にインプットした経験があります。この勉強会でも「専門でない人にも分かりやすく伝えるにはどうしたらいいのか」を重視しています。
また、私のこれまでの外科医としての知識も生かして、解剖学や病態生理学なども取り入れた内容を心がけています。
―どのような人材が必要でしょうか。
院内はもとより、院外の医療者や他の職種の方とも「当院の代表」として連携できる。そんな高い「人間力」を備えた人材の育成に力を入れています。
そのために定期的に設けているのが「人間学」を学ぶ場です。多様な職種の若手を集めて、週に2度実施しています。
秀慈会の理念にも盛り込んでいますが、この勉強会で私が最も伝えたいことは「利他の心」。つまり、自分よりも他人の利益を重んじる姿勢です。
利他の心をもって行動していれば、きっと他人にも伝わる。それが良好な人間関係と職場の和を生み出し、おのずと心の調和が保たれる。そうしてたくさんのひらめきも芽生える。そんな効果を期待しています。
地域における秀慈会の存在感は、職員の人間力の高まりに比例すると考えています。利己の心を抑え、利他の心を優位にすることは決して簡単なことではありません。だからこそ次世代を担う職員たちに繰り返し伝える場を設け、これからの秀慈会を引っ張っていくリーダーが育ってくれることを願っています。
医療法人社団 秀慈会
静岡市駿河区西脇29-1
TEL:054-287-5332(代表)
https://www.shujikai.jp/