高い技術で需要に応え経営面の安定も維持する
加古川第一陸軍病院から国立明石病院、明石市医師会立明石医療センター、そして現在と、運営主体は変わったものの、一貫して明石地区の高度医療を担ってきた。「高い技術はニーズへの対応という点だけでなく、経営面でもメリットがある」と新院長は強調する。
―運営方針を聞かせてください。
明石市の人口は約30万人。当院の患者さんの73%は市内、残りは加古川市や神戸市からお見えになります。市外を含む広域から信頼を得ているということを糧に、医療の質と安全を維持しながら、さらに磨きをかけていきたい。強みとする循環器を軸に、呼吸器、消化器、周産期、整形などでも地域トップシェアを守っていきたいと思います。
大切な柱は、「断らない医療」です。心臓血管領域では院外からの救急コールが私のところに入るようにしています。スタッフが緊急連絡を受けて出勤するのは、負担も大きいし、ストレスもある。業務命令として「行ってください」と自らお願いする、均等に仕事を割り振ることが大事だと考えています。
病床は稼働率100%を超える状態が続いたため、5年前に247床から382床へ増床。一時下がった稼働率は2017年度、平均99.2%に上っています。
特に寒冷期は、心臓や呼吸器の疾患で急性期の患者さんが急増するため、ベッドの運用に苦慮。昨年から今年にかけての冬も、救急患者を受け入れられないことがありました。
「断らない」という目標達成のために、在院日数を減らして、病床稼働率を上げる。それが、地域のニーズだとも思っています。
―在院日数短縮、病床稼働率アップのための具体的な方法は。
2017年度の平均在院日数は10・5日で、目標は8〜9日。実現の要となるのが、「高い医療技術」と「さらなる進歩」です。
心臓血管外科の僧帽弁閉鎖不全症に対する僧帽弁形成術ではほとんどの症例で、小切開アプローチを採用しています。小さな穴から内視鏡を入れて弁を形成することにより、術後1週間程度で退院できるケースが増えています。
2017年には、大動脈弁狭窄症に対する「経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)」も開始しました。明石エリア内では当院が唯一の実施施設です。開胸による大動脈弁置換術では合併症などのリスクが高い患者さんも治療できること、術後10日ほどで退院できることなどから、紹介も多くなってきました。
心臓血管外科での治療の対象となる疾患は在院日数が長くなる傾向にあります。こうした技術で退院までの期間を大幅に短縮できていることが、経営面でも大きなメリットになっています。
そのほかの診療科でも、低侵襲治療に力を入れています。患者さんは術後の負担が軽減され、早期に退院できる。病院としては、「断らない医療」が可能になり、経営面が安定し、より安全で質が高い医療の提供につながっていく。良い循環になってきていると思います。
地域の医療機関との連携も欠かせません。地域医療連絡室が中心となり、患者さんの状況について情報を交換しています。
―今後は。
在院日数が短縮できれば必要となる病棟機能や運用方法も変わります。「2025年問題」と言われる時期を過ぎると、急性期医療を必要とする患者さんも減少するでしょう。回復期のフロアをつくるなど、病棟再編成も必要になると見込んでいます。
今は病床が足りないように感じますが、当面は現在の建物を有効に使いながら、医療サービスを提供していくことが大切。同時に医師、看護師などスタッフの増員にも力を注ぎます。
患者さんのニーズの変化を察し、柔軟に対応できる病院であり続ける。その目標に職員全員で向かっていきたいと思います。
社会医療法人愛仁会 明石医療センター
兵庫県明石市大久保町八木743-33
TEL:078-936-1101(代表)
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