古都に根付く市立病院 がん医療で明日を拓く
大学病院を含め、名だたる病院が集中する京都市。この街で130余年にわたって地域医療を支えてきた市立病院は、患者ニーズをくみ取りながらがん医療を拡充してきた。
―腫瘍内科を開設して2年経ちました。
この病院は、古くから、がん医療を大きな柱としています。市域には腫瘍内科を持つ病院が少なく、必要性を感じていたとき、当院の消化器内科医が、日本がん治療認定医機構の「がん治療認定医」と日本臨床腫瘍学会の「がん薬物療法専門医」を取得。これを機に、薬物療法専門の診療科として立ち上げました。2017年度の新規患者数は52人です。
血液内科も強みです。4月には、血液内科の中に造血幹細胞移植科を新設しました。血液内科では10年以上も前に「造血幹細胞移植を関西有数レベルに引き上げよう」と独自に25年計画を策定。その目標が現実となりつつあります。
一方で、もともと内視鏡手術が盛んだった経緯もあり、2013年のダビンチ導入以降は外科系も伸びています。ダビンチによる手術の実績は昨年度末で延べ430件。前立腺がんの手術は多いときで週4例行っていますし、胃がんも40例を超えました。保険適用範囲が広がりましたので、肺がんなどでも積極的に進めたいと思っています。
放射線治療も伝統がありますので、手術・化学療法・放射線治療の各療法を組み合わせた効率的な集学的治療を日々実践しています。
がん治療の充実は、キャンサーボードミーティングが要。診療部、看護部、薬剤科、栄養科、リハビリテーション科、地域医療連携室など関係部署が集まり、臓器別にカンファレンスを行っています。
加えて、原発不明がんや希少がん、診断が困難な症例といったなどを検討するのが「拡大キャンサーボードミーティング」、さらに別個に行うのが「骨転移ボード」です。患者さんの生活の質も考慮しつつ、適切な治療方針を検討し、情報を共有しています。治療、リハビリを経由して在宅につなげるために、全職種が連携しています。
―がん検診から緩和医療まで取り組む上での思いは。
当院は「ゲノム医療から緩和医療まで」を目標にしています。京大ががんゲノム医療中核拠点病院になったので、その連携病院になるための準備を進めています。
早期発見のための取り組みとして、検診は、健診センターでの通常ドックに加えて「肺がんドック」、昨年には「乳がんドック」も開始しました。若い人の乳がん罹患も増えているので、ニーズに応えるため毎月第1を除く金曜日に行っており、精査が必要な場合は専門外来の予約を入れることが可能です。今後も、がん検診のコースを増やしていく予定です。
緩和医療は、7月に長年の悲願だった緩和ケア専門医が着任しました。今までも多職種チームでケアやラウンド、外来をしていましたが、今後は最先端の医療レベルに近づくことを目標にします。
―患者サービスも好評です。
院長になって始めたことの一つが、休日の外来がん治療です。数年前の秋の大型連休の際、「外来治療の患者さんは不安だろう」と思い、休日開院に向けて多方面と調整しました。
年末年始やゴールデンウイークなどのタイミングで開院して化学療法や放射線治療を行い、1日に合計30〜40人来院されます。
また乳腺外科では通常午前中いっぱいの診療時間を週1日、夕方まで延長しています。仕事帰りに通院できるので、特に若い患者さんが増えています。
かつては、がんと診断されたら治療のために離職するという考え方が主流でした。しかし、今は仕事と治療を両立させる時代です。患者さんのニーズに応えながら、できることは可能な限り取り入れていきます。
地方独立行政法人京都市立病院機構 京都市立病院
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