大学病院の病院長を経験し見えてきた強みと課題
この春、就任した森田茂樹・九州医療センター病院長。佐賀大学医学部附属病院病院長を経て、8年ぶりに同センターに戻って2年。他病院の病院長を経験してきたからこそ見える、改善点や強みとは。
―以前も九州医療センターに勤めていたと聞きました。
2005年から3年間、心臓外科の部長として働いていました。2008年に佐賀大学医学部附属病院に胸部心臓血管外科教授として着任し2014年からは佐賀大学の病院長も務めさせていただきました。その間、佐賀県内初の補助人工心臓の植え込みに携わるなど、大学の教室と病院の運営の双方に関わり貴重な経験を積ませてもらい、2016年に当院に戻ってきました。
―あらためて感じた大学病院との違いは。
まず感じたのは九州医療センターの診療のレベルが大学病院に負けないくらい高いということです。
どの診療科をとっても標準以上のレベルを維持していますし全国トップレベルの診療科も多数存在します。特に脳卒中の治療チームは全国的にも有名ですし、あまり知られていませんが肝胆膵のグループも最高レベルです。優れた治療成績を地域だけでなく全国、全世界に発信していきたいと考えています。
一方で病院のスペースが限られていること、特に手術室が10室と少ないことが課題です。また最新の医療機器への更新、整備が遅れていることも問題です。
―改善していきたい点は。
手術室の増設も含めた抜本的なインフラの整備が必要だと考えています。
先ほども述べましたように当院には手術室が10室しかなく、日中はどの手術室も満杯で、夜中まで多くの手術室が稼働していることも珍しくありません。年間の手術件数は昨年は5000件に達しました。
一方、私が在職していた当時の佐賀大学での手術件数は年間6000件余りでした。今では7000件近い手術が行われていると聞いています。
当院は福岡市の西半分と糸島市を治療圏としていますが、人口としては佐賀県の人口にほぼ匹敵します。福岡にはわれわれが対応できない方がまだ多くいると考えられています。
また福岡市内は、大きな交通事故や高所からの転落などによる高エネルギー外傷に対応できる病院が足りていません。福岡県から救命救急センターの指定を受けたときに、重症外傷に対応できる体制を整えることを条件に挙げられています。
現在、救命救急センターの再整備に着手しており、救急外来には救急患者にすぐ対応できるCT室と手術室を新設し、来年の3月までに地域の要請に応えられる救命救急センターに生まれ変わる予定です。まずは6000件の手術件数を目指すべく、手術部に隣接した機械室を手術室に改装する工事も進めています。
―今後の病院運営は。
医師数282人を抱える病院として、医師同士の連携をどのようにとっていくかが今後の課題です。
優れた医師が多数いても、それぞれが患者さんに個別に対応していては、総合病院の強みを生かし切れているとは言えません。主治医だけでなくそれぞれの専門医が協力して診療にあたったほうが、より良い医療を提供できるはずです。
また救急の現場では、複数の診療科の医師が集まって対応することが少なからずあります。そのときの救急治療がスムーズに迅速にできるかどうかは、日ごろから垣根のないチーム医療の文化が醸成されているか否かにかかっています。
現在、病院をあげてそのような体制をさらに成熟させるように日夜努力しているところです。そのためには「patient first」を掲げて、誰とでも話し合える、そんな病院にしたいと思っています。
独立行政法人国立病院機構 九州医療センター
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