小児周産期から高齢者医療まで
小児周産期医療を核として開院してから12年。東京女子医科大学附属八千代医療センターは、高齢者医療も柱の一つに加え、さらなる発展を遂げようとしている。
―八千代医療センターのこれまでとこれからの役割を教えてください。
誘致の話が持ち上がったのは2000年ごろのこと。当時八千代市には急性期病院がなく、重篤な患者さんは千葉市や習志野市などに搬送されていました。八千代市や八千代市医師会の要望を受け、救急、急性期を担う病院として2006年12月に開院したのが、当院というわけです。
中でも一番のニーズは小児周産期医療でした。まずは小児周産期の病棟を優先して稼働させ、成人に対応できる病棟を少しずつ増やしました。最終的には3年かけて、全356床をフルオープンさせたという歴史があります。
ハイリスク妊産婦や低出生体重児、先天性疾患がある胎児への対応は、産科、新生児科、小児科が担当。MFICU6床、NICU21床、GCU 16床を持ち、総合周産期母子医療センターとして、千葉県全域からの患者を受け入れています。すでに救命救急センターはありますが、近々、小児救命救急センターの指定も受ける予定です。
この八千代は東京への通勤圏内なので、若い世代が多く住んでいます。家族で移り住むケースもあり、子どもの数も多い。分娩の取り扱いをストップする医療機関の増加などもあり、小児周産期医療の需要はまだまだあるでしょう。
一方で、1970年前後に団地が造成された地域でもあり、当時、住み始めた方が年齢を重ねて後期高齢者となる時期に入りました。今後は、高齢者人口の伸びが若い世代の伸びを上回ってくると推測されています。
胎児・新生児から高齢者まで。それが、これから当院に求められる役割です。
―増え続ける患者数、ニーズに応えるための具体的な方策は。
2016年に145床の第二病棟を建て、全501床へと増床しました。
しかし、それだけでは十分ではありません。回復期リハビリテーション病棟や地域包括ケア病棟などを持つ病院と連携し、当院は急性期、高度急性期に特化。病床の回転率を上げていく必要があります。
そこで、「入退院支援センター」を立ち上げました。医師、看護師、薬剤師などが関わるチームで、患者さんにあらかじめ治療計画などを説明。大きな流れを伝えるとともに、ご本人や家族の希望になるべく沿った医療機関や介護施設を紹介していきます。
この仕組みがうまく回るようにするためには、患者さんやそのご家族に真の意味で理解してもらわなければなりません。
今は、まだ試行錯誤の段階で、これからの積み重ねが重要でしょう。患者さんの反応を見て、声を聞いて、改善すべきところを直す。5年、10年かけて浸透させていくべきものかもしれませんね。
―今の課題とこれからの展望について聞かせてください。
大学病院の発展のためには、「経営基盤の安定」が欠かせません。それがないと、質の高い医療も、高度な研究も、人材の採用も育成も行き詰まってしまうでしょう。
今は「働き方改革」や消費税の問題など、病院経営面でのハードルがいくつかあります。乗り越えるためには、病院長だけでなく、医療従事者すべてが、ある一定の経営マインドを持つことが重要になってくると思います。
「患者さんの命を大事にする」。その使命感とともに、病院を社会の歯車としていかに機能させていくかという視点を持つ医療人を、育てていきたいですね。
東京女子医科大学附属 八千代医療センター
千葉県八千代市大和田新田477-96
TEL:047-450-6000(代表)
http://www.twmu.ac.jp/TYMC/