心身ともに穏やかなエンドオブライフを
急性期医療に携わる中で考え続けてきた「いかに人生を終えるか」という大問題。本腰を入れて取り組むべく慢性期病院に移って3年目。この4月には院長に就任、理想のエンドオブライフ・ケア実現に向けてまい進している。
―地域性や病院の特長を。
川西市は高齢化が進んでいる地域です。総人口のうち65歳以上を示す高齢化率は全国平均で27.7%(2017年10月1日現在)ですが、市内は30%超。当院は465床の慢性期病院で、地域の高齢者を総合的にケアする役割を担っています。
障害者施設等一般病床162床、回復期リハビリテーション病床50床のほか、療養病床は現在215床あります。しかし、厚生労働省の先導で医療と介護の一体的な改革が進む中、療養病床は少しずつ減らしているところです。
一方で今年1月に38床の地域包括ケア病棟を整備しました。サブアキュート機能を中心に、介護者の負担を減らすためのレスパイト入院にも対応。入院期間の目安60日の中でどう運営していくかが今後の課題ですね。
―「慢性期医療認定病院」になりました。
昨年1月、日本慢性期医療協会から認定されました。これまで独自で行ってきた取り組みを、協会のクリニカルインディケーター(臨床指標)と対比して可視化してみようというのが申請のきっかけです。指標をクリアするため、必然的に細かな作業習慣が定着したのはよかったですね。
回復期リハビリに関しても、目標設定がしやすくなりました。指標より高めの基準を目指し、努力しています。今後は数値を分析して、より質を高めたいと思っています。
学会発表は、昨年に続き今年も予定しています。認定病院になったことで、研究発信もより活発に行っていこうという目標ができました。
―今後の抱負は。
人生の終末期「エンドオブライフ」を心穏やかに過ごしてもらえる病院を目指します。
私は当院へ来る前、消化器外科医として急性期病院で働いていました。急性期医療と慢性期医療では治療に対するスタンスが異なる部分があることを、身をもって感じています。
例えば、高齢者の誤嚥(ごえん)性肺炎。急性期は治すことが使命ですので、絶食にして抗生剤を投与してとにかく治す。しかしまた繰り返す人が多いのです。
一方、慢性期病院は少量を回数多く食べることで誤嚥しにくい状態を提供できる。当院でも言語療法士と栄養士がチームで、比較的安全な食事形態などを考慮します。
NST(栄養サポートチーム)にも20年ほど携わってきました。急性期では食べられなくなると血管から栄養補給する中心静脈栄養に移行して延命していくケースが多くありました。しかし、その後、唾液で誤嚥性肺炎を起こしたり尿路感染で発熱したりすることもある。「命を長らえる=安楽に暮らせる」ではないんですね。
高齢者の心肺蘇生についても、「肋骨が折れて当たり前」の心臓マッサージをしたほうが良いのか。肺のうっ血や気道からの出血を覚悟の上で、挿管して人工呼吸器につなぐべきなのか。それらの処置を施したとしても、数十分後には死亡確認となることが多いのです。
望まない延命を回避し、人生の最後の瞬間を穏やかなものにするための取り組みが、患者さんが元気なうちにどんな医療を受けたいかを家族や医療チームと相談する「アドバンス・ケア・プランニング」です。
その普及をぜひ、川西地区の地域ケア協議会を通して、医師会などともコミットしながら、進めていきたい。かかりつけ医、急性期病院、慢性期病院と、患者さんの意思がきちんと尊重されつつうまく回っていく形が理想です。
医療法人協和会 協立温泉病院
兵庫県川西市平野1-39-1
TEL:072-792-1301
http://www.kyowakai.com/os/os.htm