支えてくれた故郷に恩返しをしたい
1998年、整形外科診療所からスタートした社会医療法人三車会。現在はリハビリテーション医療を軸に、那賀医療圏の急性期から在宅までをさまざまな施設で切れ目なく支える。運営の原動力は「故郷への恩返し」と、殿尾守弘理事長は迷いなく答えた。
―今年4月、開設から20年経ちました。
和歌山県立医科大学附属病院の整形外科に勤務していたころ、「この地域では高齢者の骨折などが多く、整形外科的な需要が高い」と感じていました。
交通事故による外傷なども増加していましたが、対応できる医療機関がほとんどなく和歌山市内に救急搬送される患者さんも少なくなかった。「近くに整形外科医がいれば早く治療できるのに」と思い、いつしか「自分で有床の医院を開設しよう」と決心したのです。
医院に始まり、病院にまで成長できたのは、われわれの力だけではありません。何より地域住民の支えがあったからこそです。
地域の必要性に応じて運営施設の幅も広がり、今後もニーズがあれば広げていきたいと考えています。それが地域への恩返しになると思っています。
―運営の特徴は。
急性期から在宅まで、切れ目のない医療の提供を目指しています。急性期を中心に、回復期リハビリ病棟も持つ貴志川リハビリテーション病院、在宅療養支援診療所である「赤ひげクリニック」。今年4月には、整形外科とリハビリ科に特化した「たま整形外科」を開院しました。
貴志川リハビリテーション病院は、2008年に24時間の救急医療体制を整備するなど、地域の急性期医療の中核を担っています。800㎡の広々としたリハビリ室も大きな特徴で、早期の社会復帰を目指すリハビリテーションに取り組んでいます。
紀の川市に隣接する岩出市に昨年春、リハビリ強化型のデイサービスやショートステイなどを提供する通所介護施設「Acti-va(アクティーバ)」を開設しました。
アクティーバのコンセプトは、「想いを叶える攻めのリハビリ」です。「従来の高齢者施設の概念を変えたい」というメッセージを込めました。みんなで楽しく積極的にリハビリに取り組むことを目的に、トレーニングマシンを多く導入。理学療法士が中心となり指導します。ショートステイの利用者には夕食後の「ナイトリハビリ」を実施するなど、これまでにない試みも取り入れています。
施設を見学したケアマネジャーなどに大変好評で紹介も増えています。比較的、距離が近いため、大阪府から通う方もいます。
―今後は。
法人全体でセラピストの数が100人ほど。リハビリの充実のために、まだまだ人員を増やしたいと思っています。
同時に教育にも力を入れていきたいと考えています。指導者層、若手を問わず研修会や学会の費用を当法人で負担。積極的に学び、成長できる環境を用意しています。
特に、養成学校を卒業してからの5年間というのは一番大切な時期です。この間にリハビリ全般を学ぶために、法人内で急性期から在宅のリハビリまで幅広く経験してもらい、きめ細かに教育していきます。
また、診療面では股関節や足関節など、関節の機能を改善していくための外科的な治療に力を入れたいと思っています。現在、人工膝関節置換術を専門とする近藤誠副院長が診療の中心。近藤副院長はベストドクター社による「ベストドクター」にも選ばれており、当院での症例数も右肩上がりです。
7月、大学から派遣される医師の数も増え、整形外科医は18人となりました。今後も人材を充実させ、ゆくゆくは「関節センター」の開設を目指します。
社会医療法人三車会 貴志川リハビリテーション病院
和歌山県紀の川市貴志川町丸栖1423-3
TEL:0736-64-0061
http://www.mikurumakai.or.jp/