就任1年で収支上向き 職員一体で歩を前へ
「経営改善は、意識改革から」と秦野赤十字病院の田中克明病院長は語る。就任2年目。横浜市立大学附属市民総合医療センター病院長として収支改善を果たした経験を生かし、経営的に厳しい状況が続く病院の黒字化に挑んでいる。
―産婦人科医の撤退、消化器内科医の減少が続く中での就任でした。
黒字だった経営は赤字に転落。「このままでは存続できない」と思うような厳しい状況でした。
そこでまず、地域の開業医の先生方との信頼関係を再構築することを決意。昨年6月、「断らない救急」を打ち出し、開業医の先生方からの紹介はすべて受け入れることに決めました。
特に患者が多い「内科救急」に重点を置き、救急隊に当院への搬送を依頼。輪番制の当番でない日にも、受け入れ先が決まらない場合には連絡をもらうようにしています。
ただ、現状はまだ100%の応需率ではありません。職員全員が「断らない」意識を共有し、率先して動く必要がある。その徹底を図っています。同時に、当院が地域の救急医療の中のどの部分を担当し、どういった体制をつくれば良いのか、秦野市民のニーズを見極めながら、再構築したいと考えています。
―新たな診療科を開設しました。
ファーストタッチの部分を強化するため「総合内科」を開設しました。目標とする救急医療体制の充実、高齢化で増えている併存疾患への対応といった意味でも貢献度が大きいと考えています。
糖尿病の患者さんが非常に多かったことから「糖尿病・内分泌内科」も新設しました。教育入院や重症例の入院治療のほか、糖尿病以外の疾患で入院した患者さんに糖尿病の併存がある場合の管理も可能になり、病院全体の医療の質向上に貢献しています。
―直近の目標としていることは。
人口10万人当たりの医師数は全国平均249.35人に対して、市内は130.84人(2017年10月現在)。開業医も勤務医も共に少ないという状況があります。 車で1時間以内の範囲に東海大学医学部付属病院や平塚市民病院などがありますが、市内に限ると320床の当院が最も大きな病院なのです。
その中で、今後の在り方を考えると、市民にとって「最初の窓口でありたい」と。救急も含めて、ここで治療できるものは引き受け、できないものは他の地域の高度急性期病院に紹介する。そんな仕組みをつくれないか、今、考えているところです。
医師が働きやすい病院であるか、という視点での業務改善も始めています。
一番大きいのは、医師事務作業補助者の増員。診断書などの事前入力や検査の日程調整など、今まで医師が担ってきた仕事を他の職種にシフトすることで、医師の負担軽減を図りました。
他の病院と比べて、当院の患者数が特別多いわけではありません。それでも医師が忙しく見えてしまうのは、医師免許を必要としない仕事まで医師が担うという環境ができてしまっていたから。他職種と分担すれば、今よりもっと多くの患者さんを診ることができるはずです。
分娩再開も市民の大きな願いです。私の母校である横浜市立大との話し合いが必須でしょう。行政などともタッグを組み、「オール秦野」で熱意を持って、交渉を進めていきたいと思っています。
就任前後を比較すると収支は改善しつつあります。病床稼働率も大幅にアップし、中でも内科系は前年度の74.5%から96.44%へと急伸しています。
といっても、まだまだ手ごたえは十分ではありませんが、「この病院をこれから良くする」という信念はあります。全職員と一体になって、歩んでいきたいですね。
秦野赤十字病院
神奈川県秦野市立野台1-1
TEL:0463-81-3721(代表)
http://hadano-jrc.jp/