"こどもの元気のために"チームで歩み続ける
1970年、国内2番目の小児総合医療施設として設立された神奈川県立こども医療センター。「小児医療は未来に向かう医療。医療と福祉の面から社会を支えたい」と語る山下純正総長に、同センターの取り組みを聞いた。
―特徴を。
2015年、「小児がんセンター」を立ち上げました。白血病、脳腫瘍、骨肉腫、縦隔腫瘍など、小児のがんにもさまざまな種類があります。集学的治療、標準的治療の提供と推進のためには、病院全体の診療科を横断的に束ねる組織が必要だと考えました。
院内には研究を臨床にフィードバックするための「臨床研究所」もありますし、病理診断科も正確な診断で生命予後の改善を後押ししたいと奮闘しています。病院全体がチームとなって小児がんに立ち向かう姿勢を明確に打ち出したのが「小児がんセンター」の設立だったと言えると思います。
ここ1〜2年、がんを経験したこどもの長期フォローアップと晩期合併症への対応に力を入れてきました。時間が経ってから不調を起こすケースもありますし、抗がん剤や放射線を使った治療による妊孕(にんよう)性の問題もあります。さまざまな問題や悩みに、寄り添っていきたいと考えています。
同時にAYA世代の診療体制の充実も図っています。中学生から高校生ぐらいまでは、小児科と、成人を対象とする内科との狭間の時期。その世代の診療にも積極的に関わっていきます。
痛みや苦痛がなく、その子らしい生活を送れるよう、緩和ケアは診断された時点から開始。麻酔科医による鎮痛剤の投与などのほかに、当院には2匹の犬がいて、入院しているこどもがちょっと暗い表情をしている時や、大きな検査がある時に近くに行って支えています。医師、看護師、臨床心理士、そして犬...。さまざまな"スタッフ"が、チームで患者さんと家族をケアしています。
そのほか、小児救急の三次医療機関として重篤な患者の受け入れを担っています。また、児童思春期精神科病床40床を有し、こどもの心の問題にも向き合っています。
―2015年設立のメディカルゲノムセンターも有していますね。
疾患の中には、遺伝性だと思われるものや診断をつけられないものも数多くあります。近年、遺伝子解析技術が発展してきました。
センターは小児希少・未診断疾患イニシアチブ(IRUD-P)の拠点として、患者さんの窓口となっています。遺伝子を解析し、カウンセラーが疾患のメカニズムや今後について患者さんやその家族に説明していく。その臨床部門としての位置づけが大きいですね。
遺伝科や小児神経科、臨床研究所などさまざまな部門が関わり、診断だけでなく研究や人材の育成にも携わっています。
―今後の目標や展望を聞かせてください。
「こどもたちが元気になるために力を合わせましょう」
私を含め、職員がこの病院で働く理由は、非常にシンプルで明確です。今後はこの目標に向かい、これまで以上に、みんなが生き生きと働ける場所にしていきたいですね。
新生児集中治療室の増室と母性病棟の環境改善を目指す改築工事が始まっています。これまでは、保育器の中に新生児がいる時、親は短時間面会するケースがほとんどでした。
改築工事終了後は、母親も乳児と一緒に入院できる環境が整います。保育器の中にいるわが子のおむつ交換などをしながら「赤ちゃんが一人にならない」状態で、見守れるようになるのです。
完成は、来年夏ごろの予定です。今以上にこどもの成長の過程を大事にできる病院になるのを、私も楽しみにしています。
地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター
横浜市南区六ツ川2-138-4
TEL:045-711-2351(代表)
http://kcmc.kanagawa-pho.jp/