【対談】聖マリア病院 島 弘志 病院長/聖マリア病院 ロボット手術センター 谷口 雅彦 センター長

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国内外の動き見極め決断

【しま・ひろじ】 1980 山口大学医学部卒業 1981 久留米大学外科学教室(旧:第2外科)入局 1987 聖マリア病院 2006 同副院長 2009 同病院長
【たにぐち・まさひこ】 1991 宮崎医科大学卒業 1997 北海道大学第一外科 2001 米コロラド大学ヘルスサイエンスセンター留学 2012 旭川医科大学准教授 2014 聖マリア病院

 昨夏、聖マリア病院に手術支援ロボットの最新鋭機「ダビンチXi」を備えるロボット手術センターが誕生。島弘志病院長と、センター長を務める谷口雅彦外科統括部長がロボット手術のグランドデザインを語る。

―ロボット手術センターの開設に至った経緯を教えていただけますか。

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島弘志・病院長(以下、病院長) 早くから「ダビンチ」を導入しようと思っていましたが、診療報酬の問題がありました。しかし欧米では、すでにロボット手術が当たり前のように行われています。タイミングを逃せば、世界の医療からどんどん遅れていくと感じていたころ、ちょうど診療報酬の改定で適応が広がることがわかってきました。そこで、改めて検討し、昨年夏の導入を決めたというわけです。

 それと並行し、谷口外科統括部長をセンター長とした「ロボット手術センター」を2017年7月に立ち上げました。

谷口雅彦・外科統括部長(同、統括部長) ダビンチの導入に当たって、世界最先端のロボット手術を行っている韓国の延世(ヨンセ)大学やソウル聖母病院でノウハウを学びました。

 2018年4月の診療報酬改定で、従来の前立腺全摘術などに加え、胃、食道、直腸、子宮などに対する12種類の術式が新たに保険適用になりました。ロボットを活用する診療科は外科、呼吸器外科、婦人科と多岐にわたります。各科をとりまとめる場所をつくり、その存在を内外に知らせる必要がある。それがセンター化の理由です。

 センターの役割は、ロボット手術に携わる医師、看護師、スタッフの教育、各診療科におけるロボット手術の一元化、院内外への広報など。中でも、教育の側面が強いですね。

 近い将来、外科手術はロボット手術がメインとなるでしょう。そのとき活躍するのは、若い人たちです。彼らを育てるきちんとした教育システムを構築するため、内規を定めたほか、スキルシミュレーターも設置しました。

 実際の手術に臨むスタッフは、シミュレーターで100時間以上のトレーニングを行っていること、最低5例の指導医による指導を受けることなど、厳しい基準をクリアしなければいけません。

術後の回復が格段に速い

―ロボット手術には、どのようなメリットがあるのでしょうか。

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統括部長 医師側のメリットは、より正確で細かい作業が可能になることです。

 手振れが防止でき、3㎝の手の動きが約1㎝に収まります。また、腹腔鏡手術の際に見る映像は2Dですが、ダビンチの場合は3D。鮮明な画像で立体視でき、さらにズーム機能があるのも大きいですね。

 患者さんのメリットは、最小限の傷で済み、回復が早いことです。開ける穴のサイズは腹腔鏡手術と同じくらいなのですが、術後の回復速度が格段に違うというのがわれわれの感覚です。データ的な裏付けはまだありませんが、やはり、必要なところしか触らないので、手術の侵襲が少ないのでしょう。

 胃がんの手術で腹腔鏡下とロボット支援の場合の合併症率を比較したデータでは、腹腔鏡が6.4%、ロボット支援手術は2.45%という結果が出ています。

病院長 操作性が非常に優れているので、当然、手術の質が高まります。これから、ロボット手術は加速度的に日本中に広まっていくでしょう。そうすればデータが蓄積し、合併症や侵襲など、従来の手術との違いが、よりはっきり現れてくるのではないかと予測しています。

統括部長 当院でも、まず10例実施したらそのデータを公表したい。透明性を持って随時報告していくことが必要だと思っています。

ロボット移植を視野に入れて

―センターの今後の展望や目標は。

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統括部長 当院では2018年1月、福岡県南部で初めて、ロボットを使った胃がんの手術を行いました。現在までに7例実施し、6月には肺の手術も開始しています。さらに今後は、直腸など保険適用となっているその他の手術も地域でのバランスを見極めながら随時始める予定です。

 将来的には、当院が持っているトレーニング用のシミュレーターを生かし、地域のロボット手術に関する「教育センター」の役割も果たしていきたい。今はまだ走り始めたばかりですが、実績を積み上げ、いずれは多くの医師、看護師などに来ていただけるようなロボット手術教育の拠点にしたいと思っています。

病院長 久留米市は、全国でも屈指の"医療都市"です。その中でも、当院はがん診療連携拠点病院に指定されており、可能な限りの高度医療を地域に提供する使命があります。

 常にレベルを高める努力を忘れてはいけない。ロボットを活用した手術によってがん医療の最前線を担い、かつ将来のロボット手術医を育成する場をつくることは、われわれに課されたタスクです。

統括部長 2年前、インドでダビンチによる腎移植を見学しました。当時のインドでは、すでに300例を超す移植が実施されていた。手術は正確で、本当に見事でした。

 その経験もあり、私の中では手術支援ロボットを使う一番のメリットは「再建」だと考えています。臓器を切除するよりも、むしろつなぐという行為で、あの正確性が光る。「移植こそロボット」。それが肝胆膵、移植を専門にしてきた私の個人的なゴールです。

社会医療法人雪の聖母会聖マリア病院
福岡県久留米市津福本町422
TEL:0942-35-3322(代表)
http://www.st-mary-med.or.jp/


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