兵庫医科大学脳神経外科学講座 吉村 紳一 主任教授

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脳梗塞の血管内治療 進む普及と研究

【よしむら・しんいち】 1989 岐阜大学医学部卒業 1992 国立循環器病センター 2008 岐阜大学大学院医学研究科臨床教授 2013 兵庫医科大学脳神経外科学講座主任教授

 脳梗塞や未破裂脳動脈瘤に対する血管内治療の研究に取り組んできた兵庫医科大学脳神経外科学講座の吉村紳一主任教授。脳梗塞に多角的に介入することで予後改善を図る「急性期脳梗塞の予後改善を目指した先進的多角アプローチ」は、今年2月、優れた脳血管障害研究を対象とする「美原賞」を受賞した。

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―この研究について聞かせてください。

 目的は、脳梗塞への血管内治療の普及と、最新の医薬と幹細胞移植の基礎研究の推進。四つの分野の介入で急性期脳梗塞治療の進歩を目指しています。

 一つ目が、急性期血栓回収療法の普及。脳の血管に詰まった血の塊をカテーテルで取り除く方法です。

 その前段階として、すでに脳神経外科専門医が所属する全国の医療機関を対象に実態調査を実施し、全都道府県の治療実績を集めました。全国トップレベルの自治体の状況を調査、解析するとともに、治療が普及していない県や二次医療圏に治療法を広げていきます。

 二つ目は、救急隊員向け脳卒中病型分類アプリケーションの開発です。

 急性期脳梗塞では、カテーテル治療が可能な病院に搬送し、できる限り早く閉塞血管を開通させることが早期回復への鍵。しかし、現場の救急隊員が脳梗塞か脳出血かといった脳卒中の病型を判断するのは、なかなか難しいのです。

 そこで、救急隊員が患者さんの容態を確認し、複数ある症状の項目にチェックを入れると、想定されるタイプが画面に表示されるアプリを試作しました。

 脳梗塞の可能性が最も高いという結果が出た場合には、カテーテル治療が可能な病院に直接搬送すれば早期治療につながります。今後、さらに改良を重ねていきます。

 三つ目が、「PCSK9阻害薬」の有効性と安全性を確認する臨床試験。強い脂質低下作用があるこの新薬が、急性期脳梗塞にも効果があるのか、検証を進めています。

 最後は、iSC細胞(虚血誘導性多能性幹細胞)を活用した基礎・臨床研究です。脳梗塞で傷害を受けた脳に存在するiSC細胞は神経再生の可能性を秘めています。静脈投与して脳に移植すると、栄養物質を分泌することがわかってきました。急性期では脳を守り生かし、慢性期では脳を再生するため、基礎・臨床研究を実施しています。

―脳梗塞患者に対する血管内治療の「実臨床における有効性」を調べるため、大規模な多施設共同研究を主導し、今年5月、結果を公表されました。

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 全国46の大学・医療機関と共同で、脳梗塞発症24時間以内に来院した20歳以上の患者さんに施された治療法と予後記録を調査。およそ2420のサンプル数を解析しました。

 結果、脳の太い血管(脳主幹動脈)が閉塞した脳梗塞患者に対し血管内治療を実施した場合と、血管内治療をしなかった場合を比較すると、血管内治療をしたほうが、発症3カ月後の回復率(介助なしで自立した生活ができる割合)が44%上昇し、死亡率は25%低下。血管内治療普及と、血管内治療が可能な施設への速やかな救急搬送の後押しになると考えています。

 兵庫医大の脳神経外科の手術件数は救急も含めて急増しており、2017年は742例。私が着任した2013年の約2.3倍です。

 研究発表数の増加も追い風となり、患者さんが全国から来院。手術数は今後、さらに増やしていくつもりです。

 当講座は症例の種類、数がそろい、さまざまな技術が習得できるだけでなく、研究に取り組む風土もあります。脳神経外科医を目指す人には、ぜひ私たちの教室の一員になってほしい。臨床や研究であわただしい日々を送ることになりますが、1人でも多くの命を救うため、力を合わせていきたいですね。

兵庫医科大学脳神経外科学講座
兵庫県西宮市武庫川町1-1
TEL:0798-45-6111(代表)
http://hyo-med.info/


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