京都府立医科大学大学院 医学研究科 消化器外科学 大辻 英吾 教授

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NPO設立で消化器外科への扉開く

【おおつじ・えいご】 1984 京都府立医科大学卒業 同第一外科研修医 1989 米ワシントン大学医学部 1990 京都府立医科大学大学院修了 1992 同大学助手(第一外科、消化器外科) 2000 同講師 2007 同大学院医学研究科消化器外科学教授 2013 同薬物応用腫瘍外科学講座教授(併任)

 140年近い歴史を誇る全国有数の外科学教室。第11代教授として12年目を迎える大辻英吾教授が重んじるのは「医師である前によき社会人であれ」という信念。今後を担う若手の育成に力を注ぐ。

安全に治しQOLも保つ

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―教室として大切にしていることは。

 大学として信頼される消化器外科であるため、念頭に置いていることは三つ。安全に手術すること、できるだけ治すこと、そして手術後のQOL(生活の質)を保つことです。

 安全性について言えば、私の専門である胃がんでは、データを取り始めたこの5年で手術に関連した死亡はゼロ。ほかの臓器に関しても、ほぼ同様です。

 治すという点では、術後にできる限り合併症を出さない工夫をしています。というのも最近の研究で、合併症が起こると生存率が極端に低下し、さらにがんの再発率も高まることが判明。完治にはまず合併症のリスクを抑えた上で、抗がん剤との併用など有効な方法を模索します。

 そしてQOLの維持。これはやはり、腹腔鏡下手術によるところが大きい。「安全」「治る」の条件がクリアできる範囲で積極的に取り組んでいます。結果、今では大腸がんは9割近く、胃がんで7割、肝臓がんでも5割が腹腔鏡下手術。胆嚢摘出なら3日、胃がん手術でも10日ほどで退院できます。

 体は楽ですし、鎮痛剤が少なくてすむなどメリットは多い。でも本当に安全かは、実はまだ分かっていません。早期の胃がんならば開腹手術と比べても安全性は変わらないと証明された半面、進行性のがんでは不明。ですから、進行がんの場合、腹腔鏡はできるだけ避け、ガイドライン通りの治療をしています。

 根治の点でも、腹腔鏡のほうが良いと言う根拠はない。さまざまな客観的データにあまり差がなく、具体的に何が良いのかわからないのです。エビデンスに基づく医療が求められる今、そこを見極めるのは大学の役割でしょう。

求められるのは対話ができる医師

―消化器外科医の養成にも力を注いでいますね。

 以前は勧誘しなくても大勢入局しましたが、今や「3K」とも言われる外科の志望者は減少の一途。そんな中、消化器外科学の魅力に触れてもらおうと、初期研修医を対象にトレーニング講座などを行ってきました。模擬腸管を使用した吻合の練習、ブタを使った手術、他大学から先生を招いた勉強会などです。

 毎回20人以上集まるのですが、実施にはとにかく費用がかかる。その負担を軽減し、継続的に活動するため「日本の消化器外科医を育成する会」という特定非営利活動法人を今年5月に立ち上げました。

 協賛会員に想定しているのは有志や関連病院など。まずは研修事業の継続を柱として、軌道に乗せたいと思っています。

スタッフとの良好な関係なくして良い医療はできない

―常日頃、どんな医師を育てたいと考えていますか。

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 昔は、外科医は手術がうまければいいという職人気質な面がありました。しかし、今、求められるのは対話ができる医師。患者さんの話をよく聞き、気持ちを察して、家族や退院後の生活のことまで考えられる、そんな人間です。

 ですから、私が教室員に繰り返して言うのは「医師である前によき社会人であれ」ということ。チーム医療で結果を出すためには、スタッフとの関係性が要です。さまざまな職種の人と良い関係を構築し、気軽に相談してもらえるかどうか。それができずして、良い医療をすることはできないと思っています。

 人間関係などと言うと「型にはまった人間」「サラリーマン的」だと揶揄(やゆ)されることもあります。でも、実際にここから他へ赴任した人の評判はよく、私の誇りです。

 良い医療で人の命を救うことができ、社会貢献につながる。その喜びを生きがいとして真摯(しんし)に仕事に打ち込める、そんな医師が一人でも多く育ってくれたら、教授冥利(みょうり)に尽きますね。

京都府立医科大学大学院 医学研究科消化器外科学
京都市上京区河原町通広小路上る梶井町465
TEL:075-251-5111(代表)
www.f.kpu-m.ac.jp/k/dgstv-surg/


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