昭和大学病院 板橋 家頭夫 病院長

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NICUを退院した子どもに継続的な経過観察とケアを

【いたばし・かずお】 1979 昭和大学医学部卒業 同小児科学講座入局 1988 葛飾赤十字産院小児科部長 1999 埼玉医科大学総合医療センター総合周産期母子医療センター新生児部門助教授 2002 昭和大学横浜市北部病院こどもセンター教授 2003 昭和大学医学部小児科学講座主任教授 2017 昭和大学病院病院長

 3月、昭和大学医学部小児科学講座主任教授を退官した板橋家頭夫病院長。極低出生体重児の出生後の栄養管理がもたらす影響と、今後の課題を聞いた。

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―新生児栄養管理の分野ではどのような研究を。

 私が専門にしているのは、1500g未満で生まれた極低出生体重児の成長と栄養の管理です。母乳栄養が優れていることは周知の事実ですが、小さく生まれた赤ちゃんは吸う力が弱く、十分な量の母乳を自発的に摂取することが難しい。そのような状況で赤ちゃんの栄養状態を悪化させないために行うのが、アミノ酸を主体とする静脈栄養です。

 アメリカやヨーロッパでは、2000年代初頭より極低出生体重児に対して出生後早期かつ積極的に静脈栄養を開始する「アーリー・アグレッシブ・ニュートリション」が行われています。

 一方、日本では、母乳が入らない状態で静脈栄養をしてもすべてが吸収されない、また高血糖状態になる、肝機能障害や感染症を起こすなどの副作用があるため否定的な意見が強く、導入は進んでいませんでした。

 1980年代、当大学小児科学講座では、ミルクや母乳を摂取できない極低出生体重児に対して、生後11日目から0.5〜1gの静脈栄養を開始。1991年ごろ、生後3日目から1日当たり1〜2gの静脈栄養へと切り替えたところ、従来よりも赤ちゃんの発育に効果があることが分かったのです。

 さらに、生後12時間以内に開始すると感染症や肝機能障害が起こりにくく、高血糖にもなりにくいことを確認。2007年にアーリー・アグレッシブ・ニュートリションを本格的に導入しました。

―日本国内における導入の状況は。

 指導者層が懐疑的であるなどの理由で、アーリー・アグレッシブ・ニュートリションを導入している施設数は、日本の新生児集中治療室(NICU)の4分の1程度にとどまります。

 新生児の栄養についてもっと考える機会が必要だと考えた私は、他の施設と連携し「新生児栄養フォーラム」を開始。開催は今年で18回を数え、当初100人程度だった参加者も250人ほどまで増加しました。

 極低出生体重児の成長には、母乳だけでは栄養が足りず、低たんぱく血症による発育不全や、骨のミネラルの不足により骨折したりすることがしばしばあります。そこで、出生後早期から静脈栄養と共に、経腸栄養として母乳強化パウダーを併用して使用。当医局では、1995年ごろから乳業メーカーと協働して、足りない栄養を補うための母乳強化パウダー(HMS-1、HMS-2)を開発・実用化させました。

―今後の課題はどのような点でしょうか。

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 大きな障害がない限り、一般的にNICUを退院した後のフォローアップは中学入学ごろで終了します。しかし、極低出生体重児や早産児は、生活習慣病や発達障害、低身長になるリスクが高い。また、うつ病や不安神経症などの精神疾患を発症するリスクが高いほか、進学などを境に交友関係がうまくいかなくなる、仕事が長続きしないなどの傾向が強いことが、私たちの研究で分かっています。

 時間が経ってから発症することも多いため、NICUを退院した後、20歳ごろまでフォローアップし、さらには、常に出生時の体重を踏まえて検診を実施するシステムが必要であると考えています。栄養管理が身体や脳の発育に及ぼす影響はすぐに分かることではない。だからこそ継続して経過を診る必要があるのです。

 近隣の小学校で6年生を対象に、年に一度「命の授業」をしています。お母さんが痩せていて子宮内環境が悪いと、赤ちゃんが栄養をため込むようになり生活習慣病になりやすいことや妊娠の仕組みなどを説明します。命の尊さを次の世代に伝えていくことも、私たちの責任です。

昭和大学病院
東京都品川区旗の台1-5-8
TEL:03-3784-8000(代表)
http://www.showa-u.ac.jp/SUH/


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