"ずっと地元で"の思いを支えるグループに
4月に父の孝行氏から理事長のバトンを託された。2010年に東京から戻って8年余り。臨床での"現場感覚"を頼りに「地域に求められる慢性期医療」を提供するために模索してきた。次代を見据えた新たな取り組みに手応えも感じている。
―法人が運営する湖東病院の概要を。
1981年、浜松市西区に開院しました。湖東病院は当和恵会グループ唯一の病院で、介護療養型医療施設・機能強化型Aの指定を受けています。病床数は169床で、介護療養型病床のみの病院というのは全国的にも数少ないようです。県内で150床を超えるのは当院のみでしょう。
湖東病院の他に、浜松市内で介護老人保健施設やグループホームも運営しています。現在は西区に4施設、中区、南区にそれぞれ1施設あります。前理事長が「浜松市内の皆さんが、地元で最後まで暮らせるように」との思いでエリアごとに設置したものです。病床数は全体で608床です。
地域の皆さんの願いは「住み慣れた地元でずっと暮らしたい」。前理事長はその思いに応えたいと考え、和恵会のキャッチフレーズを「ずっと地元で力になります」としました。
―特徴や地域での役割を教えてください。
開設時から「親切・丁寧・平等」を掲げています。主な対象は、高齢者や認知症の方です。
2010年に戻ってきてまず取り組んだのが在宅からの直接入院を増やすこと。重症患者であっても受け入れることです。
浜松市は、特別養護老人ホームのベッド数が2010年時点で2746床。それが2017年には7割増の4736床になりました。
市内に施設が集中し、高機能化が進みました。浜松市の特別養護老人ホームの看取(みと)り率は、他の政令指定都市と比較すると高く、11.8%です。
このような地域の事情を考えると、病院機能を強化し、特別養護老人ホームなど、在宅の重症患者を積極的に受け入れる必要があると考えたのです。
開業医の先生方や地域包括支援センターなどに当院の運営内容について説明する機会を増やし、患者さんを受け入れることで、信頼を得ていきました。
結果として予定外入院の増加につながり、2010年は7人の予定外入院でしたが、現在年間50人を受け入れるまでになりました。 当院では特に認知症患者の受け入れに力を入れています。認知症患者の場合、病院によっては受け入れを拒否されるケースも少なくありません。
また、家族が在宅で看取るのは大変むずかしい。がんや循環器疾患などの合併症がある場合などはなおさら受け入れ可能な施設が限られます。当院は、それを補うことで、地域に貢献したいと考えています。
―課題は。
認知症患者の受け入れには職員の理解や教育が必要です。当院では、認知症患者やその家族を中心にした「パーソン・センタード・ケア」の考えを取り入れています。認知症患者さんの幸せは「自分が社会に必要とされていると感じること」だと私は考えます。その思いを持って患者さんに寄り添うケアを目指しています。
認知症が進み、いわゆる末期と呼ばれる段階になると嚥下(えんげ)障害、呼吸困難、喀痰(かくたん)といった苦痛を伴うさまざまな症状が出現します。がんの緩和ケアなどと同様で、認知症患者さんの緩和ケアは今後取り組むべき大きなテーマです。
介護療養型医療施設の廃止が決定し、湖東病院も介護医療院への転換準備を進めています。4月に設立された日本介護医療院協会の副会長になりましたので、その活動にも力を入れていきます。
医療法人社団和恵会 法人本部
静岡県浜松市西区入野町6413
TEL:053-440-5505
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