変化を乗り切る合言葉はハンド・イン・ハンド
創立61年の尾道総合病院。尾三医療圏にもさまざまな変化の波が押し寄せる中、杉田孝病院長は「チームワークを発揮して乗り切りたい」と語る。
―地域の特徴や現状など。
尾道は「人柄の良さ」がにじみ出ている土地ではないかと思います。当院でも患者さんへの声かけや職員同士のあいさつなど、非常に気持ちがいい。2015年の病院長就任時、私はその良さをもっと伸ばし、表現できればと考え、職員から新しいロゴマークのアイデアを募集しました。
ある看護師が提案してくれた「合わせた手と手がハートの形をなしている」デザインを見て、これはいいと思いました。
もともと当院ではキャッチフレーズとして「ハンド・イン・ハンド」を掲げていましたし、整形外科医の私にとって手は大切なもの。いろいろな思いを込められるマークになりました。小難しい言葉を並べる代わりに、何かと「ハンド・イン・ハンドでいこう」と言っています(笑)。
当院が位置する尾三医療圏(尾道市、三原市、世羅町)の状況はこの数年で大きく変わりました。三原市では産科医、小児科医の不足で周産期医療が危機的な状況を迎え、尾道市では内科医の減少が救急医療体制に影響を及ぼしています。
2次、3次救急を担う当院にもウオークインの患者さんが集まるようになり、救急車の受け入れ台数も増加しました。患者さんが信頼してくださっているのはうれしいのですが、やはり機能分化を進めなければ苦しい部分もあるというのが正直な思いです。
それでも、このような状況を見越してリクルート活動に力を入れてきたこともあり、4月に呼吸器内科、循環器内科、心臓血管外科でそれぞれ1人ずつ医師を増員できました。昨年は形成外科を開設。乳房再建に対応できるようになりましたので、乳がんの治療にも力を入れています。
臨床実習で受け入れる広島大学の学生の中にも「ここで働いてみたい」という声は少なくありませんし、一定数の研修医を迎えられるようにもなりました。
他とは違う特別な教育環境を提供しているわけではありません。ただ当院の伝統として、指導者が情熱的であること、なるべく多くの現場を体験させていることは特徴ではないかと思っています。
―組織づくりの感触は。
中学、高校、大学と野球部でした。先日も研修医たちを連れて、マツダスタジアムに足を運んできましたよ。チームワークという意味では野球も医療も通じる部分があると思います。医療はいまや医師だけ、一つの診療科だけで完結できるものではありません。
チームがうまくいくためには、各部門のリーダーを育てることが大切です。野球で言えばさしずめコーチでしょうか。育成の方針やトレーニングのプログラムはそれぞれの責任者に一任し、何か迷ったときには相談してもらう。各部門の力を結集させ、機能させることでいいチームが出来上がる。何もかも病院長が決める時代ではないのですから。
当院の従業員は1200人ほど。そのうち受け付け業務などに従事する外部委託のスタッフが200人くらいです。患者さんにとっては「病院の顔」ですから共にチームとして働いてほしいと話しています。
2011年にこの建物ができたとき、ハードのコンセプトは「ホテルのような病院」だったそうです。私はもう一つ、「ホスピタリティーもホテルのように」と付け加えました。
では、病院のホスピタリティーとは何でしょうか。笑顔を絶やさないことだけではありません。まずは、患者さんに最高の医療を提供することだと考えます。
医療にはスポーツのようにチャンピオンフラッグはありませんが、目標ははっきりしています。責任をもって、尾三医療圏の中心的な機関として地域医療を守り続けることです。
広島県厚生農業協同組合連合会尾道総合病院
広島県尾道市平原1-10-23
TEL:0848-22-8111(代表)
http://onomichi-gh.jp/