女性を生かした泌尿器科 「ダビンチ」症例数も豊富
1980年に鹿児島で開業した泌尿器科専門の「新村(にいむら)病院」。最先端の治療を導入してきた父親の跡を継いで3年になる新村友季子理事長は、全国放送のテレビ番組で「最強の女性外科医」の一人として紹介されたこともある。そのキャリアと思いに迫る。
―子どもの頃から医師を目指していたのですか。
いいえ、私は経済系の研究者になりたくて大学院に進学。でも、机の上で考えるより現場で体を使う仕事が向いていると思い、26歳で医学部に入り直しました。
当時、鹿児島大学の医学部は女性が3〜4割を占め、特に女性がハンディになることはありませんでした。ただ、今でも全国で泌尿器科を専門とする医師のうち女性は6%ほどです。
―新村病院は2013年に県内で初めて手術支援ロボット「ダビンチ」を導入。泌尿器科の女性医師として日本で唯一のライセンスを取得されたそうですね。
ダビンチを使うと、患者さんの体への負担が少なく、医師は極めてリアルな立体映像を見ながら座ったまま操作できるため、非常に手術しやすいのです。体力に自信のない女性や高齢の医師でも使いやすいという利点もあります。
2018年4月末現在、当院の症例数は611に上り、施設当たりで全国トップクラスです。九州はもちろん、関西などからの患者さんもいらっしゃいます。
― 30代から経営にも関わっていらっしゃるのですね。
2014年に「女性泌尿器科外来」を創設したところ、女性医師だから相談しやすいと大変喜ばれ、女性の患者さんが増えています。チーム医療にも力を入れ、2016年には「女性のための骨盤底筋体操外来」を始めました。医師をはじめ看護師や理学療法士などが一体となり取り組んでいます。
また、その翌年には国内初のMRI超音波融合前立腺生検システム「ウロナビ」を導入。前立腺がんの有無を90%近い確率で診断できるようになりました。
父は慶應義塾大学などで研鑚(さん)を積み、祖父の病院があった鹿児島に戻ってきました。開業してからは、最先端の治療を地域に積極的に取り入れて、地方にいる人にも最新の高度な医療を提供したいという思いが強かったのです。
私にも「常に勉強して貪欲に知識を吸収し、症例を重ねて技術を磨き、学会にも参加しなさい」と言っています。ですから、私は今でも研修や学会に積極的に参加して、それを患者さんや病院や社会に還元しようと心がけています。
MRIを導入して手術室を拡張するため、現在新棟を増築しており、秋ごろ完成する予定です。これからも専門性と質を高め、"チームにいむら"で患者さんの立場に立ってベストな治療を提供していきます。
―医師としてキャリアを積む上で、女性を意識したことはありますか。
女性だから困ったという経験はありませんでした。ただ、20代後半で結婚して、子どもを産むタイミングは迷いました。学生のうちに産んでおくか、落ち着いて10年後に産むか考えて、結局は大学の夏休みに出産。当時、研修医だった夫が育休を取ってくれたので、私は学生生活を続けることができました。医師としてキャリアを積んでいけるのは、夫や家族、まわりの方々の理解と協力のおかげだと感謝しています。
振り返ると、若いうちに産むという選択をしたことはよかったと思います。友人知人は、仕事を始めてから出産を意識するようになった人が多いのですが、やはり歳を重ねると妊娠しづらく、不妊治療をしている人が多くいます。働きながら治療するのは心身にも金銭面でも大きな負担となり、とても大変だと聞きます。
いつかお子さんがほしいと考えている女性医師には、理解のあるパートナーと結婚すること、早めの出産も選択肢に入れること、この二つをおすすめしますね。
医療法人真栄会 新村病院
鹿児島市西田2-26-20
TEL:099-256-6200
http://niimura-hp.or.jp/