テーマは理解と信頼|枠にとらわれない働き方を
昨年4月、海老名総合病院の救命救急センター開設により、神奈川県の2次医療圏で唯一の「センター空白地域」が解消された。服部智任病院長は「もっと伸ばせる余地がある」と前を向く。地域の「インフラ」を目指す同院の今の動きを追った。
―センター開設後の状況はいかがですか。
この1年間でさまざまな課題を見つけることができました。その改善策を探るとともに、センターの安定的な運用を第一に目指しています。
山際武志センター長を中心に8人の専従医がいます。
救急車の受け入れ台数は年間約8600台、応需率は92%程度。現体制では上限に近い数字だろうと思います。逆に言えば人員が充実すれば、もっといいパフォーマンスが引き出せるという手応えもあります。
またハード面の限界を感じているのも事実。救急医療の改善や急性期医療の充実に向けて新たな病棟の建設計画を進めているところです。数年内の竣工をイメージしています。
神奈川県は人口10万人当たりの医師数が全国平均を下回っており、海老名市はさらにそれを下回る状況が続いています。当院周辺の開業医の先生方も高齢化が進み、私たちとしても危機感を覚えています。
1983年、当院がこの地に開設したのも、市の熱心な誘致に応えたいとの思いがあってのことです。自分たちがやりたい医療ではなく、求められるものをどう提供していくかが私たちの基本的な立ち位置。
例えば地域のがん患者さんについては、まだ当院でしっかりと受け止めきれていないのです。休診中の呼吸器内科の再開、乳腺外科をはじめとする新たな診療科の開設も実現したい。患者さんが遠くへ行かなくても、この地域で安心して治療、療養、生活していける機能を整えていきたいと思います。
当院を運営するジャパンメディカルアライアンスは医療機関、健診施設、介護老人保健施設などを展開しています。予防医療も含めて、グループ全体で地域を支える仕組みづくりを進めています。
―医療者の働き方について思うことは。
新年度のテーマとして掲げたキーワードは「理解と信頼」。職種を越えた連携を図る場面は、今後も病院の内外で増えていくでしょう。自分の専門分野だけに目を向けていては、チームが成立しません。
脳卒中の患者さんに対して、医療者が考えるのは脳出血か脳梗塞か、手術は必要かそうでないか。介護職の方は、まひはどこに残るのか、自宅の手すりはどう設置するかを考えます。
着目する点がまったく違うのです。お互いの立場を理解して治療、ケアを進めることで、患者さんに最も利益がもたらされるようにしていくことが必要。診療報酬と介護報酬の同時改定が実施されたこともあり「従来の医療の枠にとらわれず考える」という姿勢を職員に根付かせていくにはいいタイミングではないかと考えています。
担当したからにはすべての責任を負いたい。医療者は、つい目の前の患者さんにのめり込んでしまう一面があります。決して否定するべきことではありませんが、ある面では「過剰なおもてなし」や効率性の向上を阻む一因ともなっていると感じます。
私たちは、たくさんの方に医療を提供している。その中で、何をどこまでやるべきかを判断することが大切ですし、患者さんやご家族の理解や協力を得る努力を惜しんではいけません。
水や空気のように当たり前にあるが、なくなると困る。当院は、地域のインフラでありたいと思います。院長として心がけているのは、今の医療や社会の仕組みを分かりやすく職員に伝えること。適材適所で働ける環境にしていくこと。気づきを与えることで、眠っているポテンシャルを刺激していきたいですね。
社会医療法人 ジャパンメディカルアライアンス 海老名総合病院
神奈川県海老名市河原口1320
TEL:046-233-1311(代表)
http://ebina.jinai.jp/