2019年に病院移転|地域にとってなくてはならない病院を目指して
「すべての人にとってなくてはならない病院」を掲げる京都民医連中央病院。2019年秋にはリニューアルを予定している。昨年7月に就任した松原為人院長は、「地域の方から一層頼られる病院を目指す」と力強く語る。
―病院の移転工事が進んでいますね。
1987年の開院から31年。現在、京都市右京区南太秦に新病院を建設中です。リニューアルは2019年11月の予定です。
病床数は現在の411床を維持し、延べ床面積は約2万4千平方㍍で地上4階建てです。1床当たりの面積は8・0平方㍍を確保し十分な療養環境を整備します。
リニューアルにおける三つの柱は、①急性期医療の提供と在宅復帰支援、②地域のヘルスプロモーションの拠点、③双方を支える人材育成です。
持ち合わせている急性期機能と在宅復帰機能をさらに発展させ、各科の垣根を取り払い、長年培ってきたチーム医療の力を発揮し、いわゆる総合力を駆使して京都市の西北部における地域包括ケアを支える病院として位置付けて行きたいと考えています。
また、2017年11月に加盟しましたWHOのHPH(健康増進活動拠点病院)としての役割を果たしつつ、ヘルスリテラシーの向上、ソーシャルキャピタルの育成、アウトリーチ活動を行い、急性期病院が地域のヘルスプロモーションにおいて果たすべき役割に挑みたいと思います。
地区医師会が変わることとなりますので、新たな連携の構築も重要であり、地域に資する病院として認めていただけるように頑張りたいと思います。
―新病院の特徴は。
柱の一つである急性期機能の提供は、現在の病院の在り方から大きく転換し、日常の医療管理は主としてかかりつけ医の先生方にお願いし、急性期医療、専門的医療により特化したものとしていくことを考えています。既存の「腎・循環器センター」、「大腸肛門病センター」に加えて「消化器センター」の設置を計画しています。各疾患分野における各科の連携を、かかりつけ医の先生方や患者さんに対してもわかりやすく提供できることと思います。同時に、多職種協働により相乗的な機能の向上も目指します。
総合診療医の力量を高め、救急機能も拡充し、救急車受入台数は現在の月3000台から月4000台への増加を目標としています。施設的には救急車の3台同時受け入れを可能にし、高度急性期機能、手術機能との動線を短縮し、より効率的な運営で「断らない救急」を目指します。
現在も京都市で一定の役割を果たしている透析医療では、規模の拡充と同時に災害時の透析機能の提供を重要な使命と考え、ライフライン途絶時においても十分に機能するようにインフラの整備を計画しています。
新病院の敷地は7400坪と広大であり、できるだけ地域のヘルスプロモーションに役立つよう、フリーアクセスの場所として安全性を十分に考慮した上で地域に提供していきたいと考えています。
―人材育成も柱の一つにされています。
医師に関しては、初期研修はもとより、専門医育成においても基幹型(総合内科医、総合診療医)に加えて多くの診療科で関連施設として受け入れることが可能です。看護師に関してはキャリアの一環として専門・認定看護師を位置づけ、これまで多くの専門家を育ててきました。これらの職員たちが中心となって病院の医療を支え、後継者の育成に携わっています。
研究分野では、当院独自、あるいは大学との共同でいくつかの臨床研究が進行中です。また、社会医学分野でも無料低額診療事業が患者さんのアウトカムに果たす役割の研究を進めています。
これからの取り組みとして、HPHに関わる人材育成において、総合的な医療の質の向上、特にそのなかでも患者中心志向と公正性を職員に求めていくための方法とその指標開発を研究として進めていく予定です。これがこれからの医療従事者育成で重要な意味を持ち、また、大きく役立つことを期待しています。
公益社団法人京都保健会 京都民医連中央病院
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