浜松医科大学小児科 緒方 勤 教授

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医師の技量向上で地域医療の質もアップ

【おがた・つとむ】 徳島県立城南高校卒業 1981 慶応義塾大学医学部卒業 同小児科 1989 英王立がん研究所ヒト分子遺伝学研究部 2002 国立成育医療研究センター研究所小児思春期発育研究部部長 2011 浜松医科大学小児科教授

 低身長、骨系統疾患の原因遺伝子である「SHOX」の研究などで2017年9月、「第6回欧州小児内分泌学会国際賞」を受賞した浜松医科大学小児科の緒方勤教授。研究への情熱は医局全体にも好影響をもたらしている。

ー欧州小児内分泌学会国際賞を受賞されました。

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 現在、小児内分泌の研究を世界でリードしているのはヨーロッパです。

 その中でも欧州小児内分泌学会は歴史が長く、さまざまな賞を設けて研究者の功績を評しています。6年前、同学会がヨーロッパ以外の研究者を対象にして創設したのが国際賞です。

 過去の受賞者は5人で米国から3人、ニュージーランド、オーストラリアからそれぞれ1人ずつ選ばれています。これまで受賞された研究者はいわば重鎮と言われるような方々ばかりです。現役の教授が受賞したというのは初めてです。

 これまでに英語の論文を380編、和文の論文については331編作成しました。中でも、低身長、骨系統疾患の原因遺伝子となるSHOXを発見したこと、第14番染色体の異常で起こる症状を確定し「鏡-緒方症候群」として認めていただいたことなどによって評価されたのだと思います。

 「SHOX」研究のきっかけは、1986年に群馬県の総合太田病院(現:太田記念病院)で出会った15歳で138㎝という重度低身長の男児でした。遺伝子を調べると通常、正常なX染色体は真っすぐなのですが、この男児の場合は、丸い環状の"環状X染色体"でした。

 男児はX染色体異常症と診断されましたが私は環状X染色体が成長障害に関係する染色体ではないかと考えました。そしてこの遺伝子の研究に取り組み始めたのです。

 英国に留学後は縁あってドイツ・ハイデルベルグ大学のグドラン・ラポルト教授との共同研究を始めることができました。こうして1997年に遺伝子の同定ができましたので、論文が完成するまでに10年以上かかりました。

 その後SHOXは特発性低身長、ターナー症候群、レリーワイル軟骨骨異形成症といった難病の責任遺伝子であることが判明するなど、小児内分泌の中では重要な遺伝子として位置づけられています。また、治療法もできてターナー症候群には成長ホルモン治療などが実施されています。

 SHOXについての研究はその後も進んでいます。今後、SHOXの生理作用が明らかになることで、骨の成長のメカニズムの解明につながり、これはさらには人間の成長という根源的な生命現象の解明にもつながるものと期待しています。

 研究者としてのモチベーションは、臨床で出会う患者さんの病気を何とかしたいという思いだったような気がします。

 そして、ここまで研究を続けられたのはすばらしい指導者や友人たちとの出会いがあったからでしょう。

 特に慶応義塾大学、国立成育医療研究センター研究所では多くの研究者から刺激を受けて、研究の面白さを知ることができました。

 日本はもちろん海外の各施設で私の研究を理解して応援してくれる人とも出会えました。幸せなことだったと思います。

ー小児科3代目の教授。講座の特徴など。

 当講座で力を入れているのは、学外派遣を中心にした研修制度の充実です。2011年に教授に着任しましたが、まず研修の仕方を見直したいと考えました。

 現在は医局員のほぼ全員が国内外に留学しています。医局員約100人の教室で常時8人から10人は学外にいます。

 私自身が医師となって40年近くたちますが、そのうち臨床での時間が3分の1、研究が3分の1、大学での時間も3分の1とそれぞれバランスよく過ごすことができました。そのような経験から私は医局員にはさまざまな体験を積んでほしいと考えています。

 特に小児科の各分野の国内トップクラスの指導者がいたり、多数の症例を診療できたりする施設で経験を積むことは、医師としてのレベルアップにつながると思います。

 研修制度を変えたことで入局者も約1.5倍に増加しました。入局してくる人も志を高く持っています。他施設に勤務することで新たな出会いもあります。狭い範囲に留まって自己完結せず、広い世界を知って可能性を広げてほしいですね。

 このように学外派遣を柱とした研修への取り組みを始めてから医局員は研究面でも力を発揮しています。英語論文を書いて学会で賞をとった医局員もいますし、国立成育医療研究センター研究所に派遣されている医局員は、世界的にも評価の高い医学雑誌の一つであるランセットに論文を発表しました。

 本学からランセットに論文が掲載されたのは初めてです。まだまだ発展途上ではありますが、医局の実力がついてきたという手ごたえを感じています。教授に着任した際には「論文を書こう」、とよく言っていましたが言っただけではなかなか書けるものではありません。

 しかし、研究を熱心にやっている人が増えてくることで講座の雰囲気も変わって「勉強しよう」となる。それによって医局員全体が研究や臨床などで互いに刺激し合いますし、ひいては、医局全体の雰囲気の良さにもつながっていると思います。

 学外派遣を終えた医局員が指導的立場で医局に戻っているため、診療も充実しています。大学の場合、臨床のレベルと、研究のレベルはパラレルだと考えています。二つがリンクしてより良い講座になるのです。

 私が講座を運営していく上で一番大事にしているのは、小児科医になった医局員のキャリアパスです。将来への道筋をつけ、それに向かって個人が能力を高められるようサポートすることが大事ではないでしょうか。一人ひとりの能力が上がれば結果的に地域医療の質も上がると思います。

-静岡県で講座が果たす役割、課題とは。

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 静岡県は人口が約370万人で、医学部は本学のみ。人口10万人当たりの医師数の都道府県別ランキングでは常に40数番目という状況です。

 そのため当講座では幅広い疾患を経験することができますので、さまざまな分野に対応できるスキルを身に付けることができます。

 また、本県は東西に非常に長くかつ広い地形のためカバーしなければならないエリアが広い。県内には八つの二次医療圏がありますが、特に伊豆半島、三島市、富士宮市といった地域は小児科医の不足が顕著です。

 これに対応するためにも、二次医療圏を基本の地域として考えて、それぞれの医療圏の中核となる病院を整備し、これらの施設をきちんと維持しなければなりません。

 それに向けて今は体制の見直しを図っています。これまでのところ毎年5、6人程度入局していますのでうまく循環していますが、今後も医局員が疲弊しないように人員を配置します。

 また、県東部では4月の新専門医制度スタートに伴い、これまで関東の大学から派遣されていた医師が引き上げられる動きもあります。本学医学部に求められる役割がより大きくなっていると感じています。

国立大学法人 浜松医科大学小児科
静岡県浜松市半田山1-20-1
TEL:053-435-2111
http://www2.hama-med.ac.jp/w1b/pediatr/


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