ICTの活用がHITOの未来をつくる
2017年、ICT活用で医療の質向上と効率性を追求する「未来創出HITOプロジェクト」を始めたHITO病院。石川賀代理事長・病院長が描くHITO病院の未来予想図とは。
―未来創出HITOプロジェクトとは。
ICT(情報通信技術)を活用して業務効率を図ることで、患者さんと向き合う時間を増やし、かつスタッフの働きやすさを支援することを目的としたプロジェクトです。グループ法人への拡大も視野に入れています。
厚生労働省も医療や福祉においてICTを活用することでその質を上げることを推進しています。当院も、ICTを医療や福祉の中で将来的にどのように活用していくのかを見極めるためにも、まずは実際に試してみたいと考えました。昨年1年間を、第1段から第4段までに分けて、それぞれの時期にさまざまな取り組みを手がけました。
―患者向けの取り組みについて教えてください。
昨年の夏に運用をスタートしたのが、患者が自身の診療情報の一部を閲覧、保管できるサービス「カルテコ」です。
現段階では、検査の結果、処方された薬、診療中に使用された薬剤名などを自分のパソコンやスマートフォンを使い見ることができます。自分自身の病気について、いつでもどこでも手軽に見ることができるという点がポイントです。
現在約180人の患者さんがこのサービスを利用。思った以上に多くの方に活用していただいていると感じています。
導入にあたっては、地方都市の病院のサービスをどれくらいの人が使うのか正直未知数でした。
しかし、実際に始めてみると団塊の世代の患者さんなど高齢の世代の方の生活にもスマホがしっかりと根付いているのだと感じました。利用されている患者さんの世代は20代から70代まで幅広く特に50代から70代が中心になっています。比較的男性の方が活用しているようです。
また、遠方に住んでいる家族が、検査結果を知りたくてデータを見ているといったケースもありました。「そういう使い方もあるのだ」と、逆に患者さんに教えられましたね。
今後も、画面上で見られる情報を段階的に増やしていくなどサービスの充実を図りたいと考えています。
また、次のステップでは、患者さんが自分自身のデータを活用して、疾患の予防ができないかと考えています。
生活習慣病などは、われわれ医療職がいくら治療、指導しても限界があります。最終的には患者さんに生活の中で努力してもらわないといけません。その意識付けのきっかけになるのではと期待しています。
―業務効率化のための取り組みは。
いくつか取り組む中で特に職員に好評なものの一つが「LINE WORKS」です。無料通信アプリLINEの使いやすさはそのままに、企業・法人でも安心して使える「業務」ツールとしてLINE WORKSを活用しています。
現在われわれ医療スタッフが院内で連絡を取るツールの中心になっているのはPHSです。しかし、医師も看護師も多忙ですのでなかなかPHSに出られなかったり「通話中」というのはよくあることです。
また、PHSをかけて相手が出るのを待っている時間や、会議の連絡などで同じ内容を複数人に連絡しなければならない時間など、1回あたりは短くてもトータルで考えると案外長いのです。
そこで、緊急ではないのだけれど伝えなければならないような患者さんの情報や事務的な情報、例えば「明日は会議があります」「今から回診に行きます」といった件はLINE WORKSを使うことで情報を一斉送信するようにしたいと考えました。
スマートフォンは病院側が支給します。セキュリティーは強化されていますので患者さんの情報は守られています。
LINEの場合、相手が情報を確認すると「既読」と表示される機能があります。相手が読んでくれたかどうかも把握できます。この機能も現場には大いに役立っています。
私自身も活用していますが、患者さんの情報の伝達や院内情報の共有という目的を果たすには大変有効なツールだと感じています。
今後は、院内だけでなく在宅でも使用できないかと考えています。例えば訪問看護で患者宅に行った看護師が、褥瘡(じょくそう)の変化など主治医にすぐに診てもらいたいものがあればスマホで撮影して送り、その場で指示を受けることができます。これによって迅速な診断、治療につながります。セキュリティーの問題など、運用面では課題がありますが活用したいツールの一つです。
―その他のツールは。
話した内容がテキストデータに変換される音声認識ソフト「AmiVoice(アミボイス)」を使って、電子カルテなどの入力の効率化も図っています。
リハビリテーションや回診後の電子カルテの入力などにリハビリ職や看護師が活用。スタッフが入力したい内容をマイクに向かって話すと、文字に変換し入力される仕組みです。医療分野の辞書を内蔵していますので、誤変換もほとんどありません。
これまでは電子カルテの入力にかける時間が長く、スタッフの勤務時間にも少なからず影響していました。現在一部病棟に導入しています。これまで入力にかけていた時間が3分の1程度に短縮できているようです。
今のところは「AmiVoice」に関してはトライアル期間です。実際に使用して、「こう変更してほしい」「ヘッドセット型がいい」などといった現場の意見を聞きながら、より良いものを導入したいと考えています。
スタッフの業務効率化の目的は、働き方の見直しもありますが、それによってできた時間を患者さんと向き合う時間に使ってほしいと考えているためです。ICTの活用の本来の目的を忘れずに医療の質を上げる努力を続けていかなければなりません。
―今後、取り組みたいことなどは。
2013年に新病院を開設し、病院名もHITO病院と改めました。この5年間は情報発信に力を入れて、私たちが地域でどのような役割を果たしていきたいのかなどを伝えてきました。これによって、HITO病院の存在はずいぶん浸透してきました。
次のステップとして考えたのが、地域のみなさんの話を聞くこと。
このため昨年末から地域の公民館などに医師らが出向いて講演をする小規模な健康相談会を始めました。大がかりな会と違い参加者が気軽に相談できるのが特徴です。
毎回、20人ほどが参加。講師を務めた医師によると話しやすい雰囲気だったのか、みなさん積極的に質問されたそうです。
これまでに婦人科の「腹圧性尿失禁」や「腰痛」など身近なテーマを取り上げました。このような活動を通して、地域のみなさんと顔の見える関係づくりを進めながら、病気の予防などについてサポートしていきたいですね。
社会医療法人石川記念会 HITO病院
愛媛県四国中央市上分町788-1
TEL:0896-58-2222
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