雲南市立病院 松井 譲 病院事業管理者

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生活を支える医療施設へ いよいよ新本館棟稼働

【まつい・ゆずる】 島根県立出雲高校卒業 1974 群馬大学医学部卒業 岡山大学整形外科教室入局 1988 医学博士取得 2010 公立雲南総合病院(現:雲南市立病院)病院長 2011 雲南市立病院事業管理者

 神話の郷、島根県雲南市の雲南市立病院がこの3月、新本館棟を開院させた。5階建てで総事業費は97.6億円に及ぶ。新築にあたって改善した点や整備の方針、そして今後の運営方針などを松井譲・病院事業管理者に聞いた。

◎新本館棟の概要

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 旧病院が建てられたのは、およそ半世紀前の1967年です。2013年の基本設計に始まり、2014年の実施設計、2016年の起工を経て、当初の予定通り、今年の年初に完成しました。

 これまでは病室も廊下も狭く、ベッドの出し入れにも不都合を感じていました。また、増築を重ねたことから院内には段差も多くありました。耐震基準も満たしておらず、色々な面で時代にそぐわなくなっていましたので、これらを一斉に解消できたことをうれしく思っています。

 新本館棟は5階建てで病床数は281床。建築面積は8076㎡、延床面積は2万5792㎡です。

 1階には救急・外来、総合受付などを配置。2〜4階を病棟とし、5階に機械室を置いています。

◎掲げた四つの整備方針

今回、整備方針として四つの充実を掲げました。「外来」「病棟・病室」「外構」「環境」の充実です。

 「外来」で最も配慮したのは動線。北側にある玄関から、受付や診療スペースが集中する南側へのアクセスが重要だと考え、南北を貫通する通路を設けました。

 また、外来に関するさまざまなスペースを可能な限り1階に集約することで、来院者が迷わず、移動距離も短くてすむシンプルな造りを目指しました。

 「病棟・病室」では、スタッフステーションをぐるりと囲むように病室を配置したことが大きいですね。看護職の動線短縮だけでなく、どの病室に入院していてもスタッフステーションが近くにあると感じられることが患者さんの安心感にもつながると思います。

 さらに、個室を希望する声が増えてきたことを鑑みて個室を増床しました。1床当たりの面積も8㎡以上に設定。ゆとりある設計は開放感が得られるだけではなく、インフルエンザなどの院内感染を防止する上でも意味があることだと考えています。

「外構」面では旧本館跡地に新たに157台分の駐車スペースを設け、全体で323台分の駐車場を確保する計画です。身体障害者用も20台を確保。建物までの通路にはひさしを設置して雨よけ対策も施したほか、段差の解消を徹底し、敷地全体をフラット化しました。

 最後の「環境」ですが、木材が由来の再生可能な資源「木質バイオマス」を採用していることが特徴として挙げられると思います。雲南市は市の80%に及ぶ森林資源を有効活用するため、木材をエネルギーに変換する森林バイオマスエネルギー事業に取り組んでいます。そこで当院も自然エネルギー設備を取り入れることにしました。木質バイオマスチップを使うボイラーなどを設置しています。

◎現場の声をできるだけ反映

 今回の設計では、職員でワーキンググループを作って議論を重ね、意見を集約しました。トップダウンではなく、ボトムアップ方式で作ったのが特徴だと言えると思います。

 病院を使うのは現場の職員ですから、できるだけ彼らの声を反映させたいと考えました。重要視した動線の改善も職員の声から始まっています。ベッドの位置や各種スイッチ類の高さに至るまで、細かい点も話し合って決めています。

 本当にさまざまな意見が出てきましたので集約するのは大変でしたが、一つひとつじっくり吟味して妥協のない設計ができたと自負しています。

 設計段階から多くの職員が関わっていますので、新本館棟に対する期待は高まっています。私としても新しい職場で、彼らが気持ちよく仕事をしてくれるのを期待しているところです。

◎地域医療を支えるために

 雲南市の高齢化率は1月末日現在で37.5%。高齢者は遠方の病院まで通うのが難しいこともあり、当院は高齢者特有の疾患すべてに幅広く対応する必要があります。3次医療は難しいとしても、1次2次まではここで完結させたいと思っています。

 高齢化率はまだまだ高まっていくでしょう。人口自体は緩やかに減っていくかもしれませんが、医療ニーズは現在と同じように続くのではないかと考えています。

 そこで重要になってくるのが医師の確保です。保健師の矢田明子さんが代表理事を務めている地域づくり団体「特定非営利活動法人 おっちラボ」の縁で、沖縄県の南大東島と西表島から2人の総合医が当院に赴任してくれたのは望外の喜びでした。

 地域医療を担う人材育成を目的に設けられた医学部地域枠推薦制度を通して、島根大学の学生たちにも、いつかはここで活躍してほしいという思いがあります。今後も、あらゆる手を尽くして医師の確保に努めていくつもりです。

◎患者の背景を知る重要性

 2009年には、「地域を支える医療者は地域で育てる」をコンセプトに「地域医療人育成センター」を開設しました。小学生の病院見学から、研修医の教育まで、独自のプログラムで取り組んでいます。

 その事業の一環として、現在、地域医療実習では、さまざまな病院の初期研修医を短期間ですが受け入れています。姫路赤十字病院など遠方からの初期研修医もいます。中山間地の医療を実体験できると好評です。

 実習では研修医たちに患者さんと交流し、生活の場を見てもらうようにしています。実際に患者の自宅を訪問したり、家族と話したり。暮らしを見つめることで得られることは実にたくさんあります。

 病気だけをみるのではなく、その患者さんが抱えている背景に目を向けるところから医療を考えてほしいという思いが私たちにはあります。

 例えば、患者さんのお宅におじゃまするだけで「こんな遠くからわざわざ病院に来ていたのだ」と知ることになります。すると、自然に対応も変わると思うのです。

 われわれが目指しているのは、生活を支える医療。その実現のために、地域医療人育成センターが果たす役割は大きなものになっています。

◎2018年の展望とこれから

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 今年はまず新本館棟へのスムーズな移行を第一の目標に掲げています。あらゆる面でトラブルが起きないよう準備を整えています。

 私たちは患者さんに喜んでもらうことが一番うれしいわけです。ですから、究極的なところを言えば、一人でも多くの患者さんに喜んでもらえる病院を目指していきます。

 私たちの病院で治療できず、転院された患者さんがこちらに「早く帰ってきたい」とおっしゃられたことがありました。「ここの病院は温かいね」と言われることもあります。

 新本館棟ができたことで、「建物がきれいになって近寄りがたい」という印象を地域の方に与えるようでは、意味がありません。これまで通りの近い距離で、患者さんと向き合える病院であり続けたいと思っています。

雲南市立病院
島根県雲南市大東町飯田96-1
TEL:0854-43-2390(代表)
http://unnan-hp.jp/


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